お金を育てるにはどうしたらいいのか、という話になると、「年収をいくらまで上げたい」、「定年までにいくら貯めないといけない」など、比較的大きな金額を挙げる人が多くいます。

たしかに、大きな金額を意識した方が、それに向けての計画も立てやすいでしょう。しかし、私たちが意識しないといけない数字は、年収や老後資産といった大きな金額だけでなく、この瞬間における自分の時給です。

今回は自分の時給を意識しながらお金を育てる話をしたいと思います。


なぜ自分の時給を意識するのか?

社会人になると、「いまの年収がいくらで、転職するといくらになる」、「大学の同期はあの会社でいくらぐらい年収をもらっている」など、年収を意識するようになります。しかし、学生時代にアルバイトを探すときは、年収ではなく時給を意識していたのではないでしょうか。

筆者は10年以上会社員をしていたので、その間はずっと年収を意識していましたが、独立してからはあまり興味がなくなり、その分、時給を意識するようになりました。

会社員の時は、給与をもらうのは会社からで、朝会社に行って夜は家に帰る、これを1年間繰り返した結果、年収でいくらもらえるか、という感覚でした。独立してしまうと顧客は複数社に渡り、勤務時間も勤務場所も全て自己の裁量によって決められてしまうため、意識が年単位から時間毎に変化していきます。すると、年収を上げる感覚より、単価を上げる、つまり時給をいかに上げるか、という発想に切り替わっていくのです。

では、年収500万円の会社員の時給はいくらでしょうか? 仮に1日8時間勤務で、1カ月に20日間働く人を想定してみましょう。この場合の時給は約2,600円になります。会社員であれば、年収を上げるために年収600万円の会社に転職するといった考えになりますが、独立するといかに単価の高い案件を受けるか、または稼働時間を下げるかだけを意識し、時給2,600円から上げていくことに意識を巡らせます。みなさんも、まずは自分の時給を計算してみてください。学生の時よりもお金を持っている気がしていても、意外と学生時代の時給と変わらない……と思う人も多いかもしれません。

実家に住むか、一人暮らしをするか

筆者は大学を卒業して、社会人になったばかりの時は、埼玉の実家から六本木の職場まで、毎日とてつもない通勤ラッシュに耐えながら、片道1時間通っていました。まだ給料の低い新入社員は、実家暮らしが最も経済合理性のある行動だと信じて、入社から半年は我慢していました。しかし、埼玉から都内に向かう電車の通勤ラッシュは想像を絶するもので、会社に着くまでに体力を消耗し、仕事で疲れ果てた身体を今度は帰宅ラッシュが襲ってくるのです。

結局、半年後には実家を出て都内で一人暮らしをするように。実家を出てからしばらくは家賃がもったいないと感じたこともありましたが、時給を意識してみると、中長期的な観点からはとてもいい決断だったと今でも思います。

新入社員の時は前述の条件で時給を算出してみると1,500円程度。しかし、満員の電車では本も読めず、スマホも触ることすらできないため、往復の2時間は何もできません。従来は3,000円を稼ぎ出せる時間にもかかわらず、何もできないのです。これを20営業日で考えると60,000円の機会損失になります。しかも、通勤による疲労から業務時間内の効率が低下したり、帰宅後の睡眠の質が落ちることを考えると、実際にはそれ以上の損失を生んでいたといえるでしょう。

オフィスまで10分ほどの場所に家を借りて、家賃は発生しましたが、その分、自由に使える時間は増えました。当時、副業が禁止だったのでお金は稼げませんでしたが、資格の勉強や業務に必要な調査の時間に充て、将来的な年収の上昇、ひいては時給の上昇につながったと実感しています。