はじめに

ラグビー母国の代表選手もゾッコン

自著に「選手の能力を強化しようと思えば、一人ひとりの性格をよく理解しなければならない」と綴っていたジョーンズ氏。日本代表のHC時代にはほめたたえたり、時には逆に突き放したりするなど、各選手の個性に合わせ対応を変えていました。「桜の戦士」を「戦う集団」へ変えた人心掌握術は、イングランド代表のメンバーの心も捉えたようです。

オーウェン・ファレル
記者会見に臨むイングランド代表のジョーンズHC(左)とオーウェン・ファレル主将

W杯期間中、イングランド代表をフォローしている記者によれば、チームのメンバーには「“エディー信者”が少なくない」といいます。ナンバーエイトのビリー・ヴニポラ選手はその一人です。

2011、2015年とW杯を連覇していたニュージーランドのオールブラックスとの準決勝を控えた同選手は、「エディーよりも多くニュージーランドに勝ったコーチを知らない」などとジョーンズHCに絶対の信頼を置いていました。

タックルの強さや豊富な運動量が売りのフランカー、サム・アンダーヒル選手も南アとの決勝戦の前日、「エディーは素晴らしいHCだ。選手のために何事も単純かつ容易にする。過度に複雑化することがない」と、ジョーンズ氏の手腕を高く評価していました。

ビジネスパーソンが学ぶべき点は?

選手にハードな練習を課すのは、日本代表のHC時代と同じのようです。それでも、南アとの決勝に右ウィングで先発するアンソニー・ワトソン選手は10月31日の会見で、「トレーニングはいつも通りにタフだったが、必要なものが得られる内容だった」などと密度の濃さを強調していました。

ジョーンズ氏以前の日本ラグビーが練習時間の長さを重視する一方で選手各自の判断力を高める練習が軽視されがちだった状況は、ともすれば日本企業における旧来的な働き方と通じるところがあるかもしれません。主要国に比べて出遅れているとされる労働生産性の向上が叫ばれる中、日本のビジネスパーソンがジョーンズ氏から学ぶべき点は多そうです。

母国のオーストラリア代表を率いた2003年のW杯では準優勝。ウェブ・エリス・カップにあと一歩、届きませんでした。超満員が予想される横浜のスタンドで、いったいどのような「エディー・マジック」を披露するのでしょうか。

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