はじめに

「すそ野は広く、頂は高く」

――ちょっと意外な話ですね。高級品の世界では「希少性」がいかにもブランド力を押し上げるのかと思いきや、ある程度は市場で目につかないと、認知度や人気がそもそも上がらないという……。

広田:ブランドビジネスとは面白いものです。「すそ野は広く、頂は高く」が必要なのです。ロレックスは必ずしも「頂(=マニア度)」は高くないのですが、この会社自体があまりブランドの情報を開示していないので、親しんでいるユーザーたちがみんな調べるようなって造詣が深くなり、自然と「頂」も高くなった。

この「数」の問題は難しいですね。コモディティー(市場価値の低い一般商品)になってはいけないが、雑誌などでしか見られないモノになってもいけない。実は職人が1つ1つ手作りした物は、ブランドとして成立しづらいのです。(店で簡単に)見ることができないから。ライカやシャネルだってそうですが、工業化した物の方がブランドビジネスとしては成立しやすいのです。

――こう見ていくと、ロレックス人気はいろいろな要因が重なって成立しているようですね。

広田:確かにロレックスは、「万事抜かりが無かった」点が大きかったと思います。まあ、この価格帯の時計では随一と言えるくらいによくできています。やはり、モノがちゃんとしていないと「論外」ですから。

――ありがとうございます。次回は、このロレックスを始め時計初心者が気になる「リセール」の秘密に迫りたいと思います。

広田雅将(ひろた・まさゆき)
時計ジャーナリスト。時計専門誌『クロノス日本版』編集長。共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン-超高級機械式腕時計に挑んだ日本のモノづくり-』(日刊工業新聞社)、監修作品に『100万円超えの高級時計を買う男ってバカなの?』(東京カレンダーMOOKS)など。