はじめに

ステータスシンボル

――米国大統領に贈呈したといった逸話が有名ですね。

広田:また、ロレックスは会社として(購入者への)メンテナンスをちゃんとしていました。そもそも時計として丈夫で正確、「モノがちゃんとしていて素晴らしい」というのもありますね。

――ただ、いくらロレックスが高品質でも、他ブランドに比べて知名度人気が頭一つ抜けているのは、素人目にもちょっと疑問です。高レベルなブランドは他にもありますし、高級路線は多くのスイスメーカーが取ってきた戦略でもあります。

広田:ロレックスはブランド戦略で、一貫して「防水性」「正確性」「ステータスシンボル」というポイントを(消費者への)コミュニケーションで言ってきました。一方で(超高級ブランドでない)こうした実用時計メーカーは、販促にお金をよく使います。例えば他ブランドはアンバサダー(商品を宣伝してもらう「大使」の意。時計の場合、よくスポーツ選手や芸能人などに商品を贈り着用してもらう)を立てる手法を好みます。しかしロレックスはそれを使わず、ステータスシンボルとしてのイメージを一貫して伝えてきました。その点がうまかったと思います。

時計(のデザイン)自体も一貫しています。70年前の時計と2019年の時計を見比べても、「オイスターは同じこういう形だ」といったことが分かる。時計のスタンスが全然変わらず、「アイコン」になっているというのも良かった。

また、ブランドが成立する条件として、実は市場にある程度の「数」が無くてはならない点もあります。逆説的ですが、時計を買いに街に行ったとき、時計店や中古ショップに一定数置いてないと、ブランドにはならないのです。

その点、ロレックスのような(商品数の)規模は、なかなか「ちょうどいい」とも言えます。60年代のロレックスは年間6万本程度しか作っていなかったと思います。それが今は、100万本とはいかないまでもそれに近い数を作っています。