はじめに

キープレーヤーはベトナム航空

満を持しての投資制規制の緩和を受けて注目されているのが、ベトナム航空の動向です。

同社に関しては、2016年に日本のANAホールディングスが8.8%の株式を取得し、現在ベトナム政府に次ぐ第2位の株主となっています。今回の投資規制の緩和を受けて、ANAホールディングスが持ち株比率の引き上げに動く可能性があるのではないか、と市場は注目しているのです。

ベトナム航空+ANA
ANAHDの出資拡大が噂されるベトナム航空の機体

政府は、5月のベトナム航空のホーチミン証券取引所への上場に際し、保有比率を現在の86%から段階的に51%まで引き下げる方針を示しました。ただし、今回の外国人投資家の出資比率の上限引き上げは小幅にとどまり、依然として国営企業の改革に対する政府の慎重な姿勢がうかがえます。

今のところ、ベトナムの航空業界において、今回の規制緩和を受けた大きな動きはなさそうですが、ANAホールディングスによる持ち株比率の引き上げは、同社のアジア路線強化とベトナム航空の国際線強化という2つの側面を持つため、引き続き両社の動向が注目されます。

高速鉄道との競合関係はどうなる?

ベトナム鉄道公社によると、来年にも北部のハノイから南部のホーチミンまでの1,560キロメートルを結ぶ、南北高速鉄道の建設が着工する計画です。当初は時速350キロ、所要時間約5時間30分で両都市を結ぶ計画でしたが、採算度外視の計画に政府内でも異論が噴出。速度を時速200キロに落とす案が浮上するなど、計画は迷走しています。

ベトジェット航空
ベトジェット航空の機体

南北高速鉄道プロジェクトが打ち上げられた当初は、ドル箱路線のハノイ~ホーチミン間において、鉄道と航空の競争激化が懸念されました。しかし、日本の本州とほぼ同じ距離の移動でビジネスでの鉄道利用は考えにくく、仮に計画通りに開通したとしても、航空需要は底堅く推移するでしょう。

経済成長に伴って一段の成長が期待される一方、群雄割拠の様相も呈しつつあるベトナムの航空業界。国内外の官民の思惑が入り乱れる中、どの企業が勝ち残れるのかという点について、現時点では“視界良好”とはいかなさそうです。

<文:市場情報部 北野ちぐさ>

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