はじめに

高額なスーパーカーとはちょっと違う贅沢さ

走り出してすぐに感じたのはゴツゴツとした感覚でした。ボディがしっかりとした上にサスペンションも硬め、タイヤもスポーツタイヤとくれば当然の結果ですが、しばらく走ると慣れてきたというか、あまり気にならなくなりました。これまで乗ってきたスポーツモデルの中でことさらに不快ということもなく、納得できる乗り味です。いや、どちらかと言えばノーマルのスポーツモデル「S」の方がむしろサスペンションは硬く、GRスポーツの方はしなやかさをしっかりボディで受け止めている感覚で実に気持ちのいい感触。

世界の一流ブランド、BBS製アルミホイールを採用

街角でもステアリングを切り込むと、しなやかにピタリと狙ったラインに乗る感覚は実に小気味よく、楽しい動き方をしてくれるのです。ボディが小さいということもあるのですが、クルマの動きを完全にコントロールしている感覚がこちらに伝わってきてどんどん楽しくなります。もちろんルーフを開けていますから、街角の風を感じながらキビキビドライブです。

次にルーフをひとまず締めて高速へと入り込みます。スチールルーフをクローズドにしていますから、スポーツクーペということになります。風切り音も小さく快適な高速走行ですが、なんとも言えなく直進性がとてもいいのです。横風の強いアクアラインの上でも、あまりステアリングが取られることもなく、軽やかに進んでいきます。

そしてここでレカロシートの気持ちよさに改めて気が付きました。コーナリングでのサポートはもちろん、レカロの良さは高速などのクルージングの時にもシートのサポート製の良さを感じることが多いのです。ピタリと体を支える感覚で走り出すと疲労感も少なく、快適なクルージングとなるのですが、コペンGRスポーツもまさにその感覚です。

そしていよいよワインディング。ここで再びルーフを開けます。実はボディの剛性を保つためならルーフは閉めている方がいいのですが、郊外の気持ちのいい風景を眺めながら走るのですからオープンが一番です。フックを外し電動ルーフの作動スイッチを操作して20秒ほどで、本当に気持ちがいい秋の空が頭上に広がりました。

約20秒でルーフは収納され、オープンとなる

そこですぐにアクセルをグッと踏み込んでスタート。次々とコーナーを駆け抜けていきます。そのステアリング感覚は素直そのもの。しなやかでしっかりと路面をグリップしてくれるサスペンションのお陰で、なんとも言えない安定したオープン走行を存分に楽しむことが出来ました。

別に飛ばす必要もありませんがせっかくのGRスポーツですから、少しばかりハードに走ってみたのですが、乱れることがないのです。いや、少しぐらい乱れても立て直しが楽で、コントローラブル。気が付くとニコニコしながら郊外を走っていました。これこそがスポーツカーたるゆえん。

クルマを止めて少し考えてみました。

本来、軽自動車を求める多くのユーザーにとって、このコペンGRスポーツのような走りの性能は不要なものかもしれない。よりリーズナブルに、より便利でより実用度の高いクルマを求めたところに、軽自動車が存在している。一方、コペンGRスポーツにあるのは、すでに軽自動車と呼べないほどの高額なプライスと走りの気持ちよさという、およそ実用とはかけ離れた価値。

これを軽自動車の魅力としてお金を支払うのは、ある意味相当な贅沢と言うことになる。贅を尽くした高額なスーパーカーの贅沢さとは、まったく異質で違う贅沢な感覚をコイツで味わうことになるのかと思うと、少しばかり嬉しくなりました。

そしてなにより、30万円の価格アップで、ここまで贅沢な気分にさせてくれるコペンGRスポーツは、この時期には嬉しい“お買い得な福袋”と言っていいのかも知れません。

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