はじめに
しゃべらないキャラの感情をどう表現?
――原作者・よこみぞさんの意向を反映して、キャラクターたちがしゃべらない方向で進めることはかなり早い段階で決まっていたそうですが、角田さんから脚本が届いた時にはどんなことを感じましたか。
まんきゅう:「角田さんにお願いして本当に良かった!」と感じました。チームでディスカッションした当初は、(キャラクターのセリフの代わりに、状況を説明する)ナレーションをどう入れ込むかについて、具体的には決まっていませんでした。シナリオに起こすのが難しい中、ワクワクする物語を書いて下さって……今でも初稿を読んだ時の感動は忘れません。
(C)2019 日本すみっコぐらし協会映画部
――しゃべらないすみっコたちを、物語の中で動かす際に工夫したことはありますか。
まんきゅう:声を出してしゃべらないキャラクターを「どうやって感情表現させるのか」が本当に難しかったです。「キャラクターのリアクションはナレーションで補足して説明し、感情表現はキャラクター自身にさせてください」とアニメーションチームにお願いしました。
元々の表情がとてもシンプルだったので、汗ひとつ、まばたきひとつでも意味が出てしまいます。1ショットずつ話し合ってアイデアを出し合いながら何度もリテイクを重ねて、丁寧に作り上げていきました。このあたりの工夫も語り尽くせないほどたくさんあります。細部までこだわっていたアニメーターのみなさんには感謝の気持ちでいっぱいです。
「笑い」のシーンを描く時の意識
――「食べ残された設定のキャラクター『とんかつ』がこう動くのか、なるほど」と、キャラクターを知っている人が見ると、映像作品でさらに世界が拡張した感じでした。キャラクターたちにクスリとさせられるシーンも多い印象ですが、「笑い」のシーンについて、ギャグアニメを多く手掛けてきた監督のお考えをお聞かせください。
まんきゅう:「ここで笑わそう!」と意識すると大体スベるので、「とんかつだったらこんな時にどういうリアクションするだろう?」「しろくまだったらどうだろう? じゃあ、とかげだったら……?」と、そのコたちなりの反応をしっかりと描いていくことを意識しました。これまでギャグやコメディを描く機会が多かったですが……笑いは難しいですね。
(C)2019 日本すみっコぐらし協会映画部
――これまでも、監督は既知のキャラクターの魅力を生かしたアニメーションを手がけてこられましたが、いつもどのようなことを意識していますか。
まんきゅう:「この作品のこのキャラクターの魅力を伝えるにはどうすればいいか」、そして「誰に届けるものにしたいのか」を意識して作品と向き合っています。それは「すみっコぐらし」でも他作品でも長編でも短編でも同じです。