はじめに

新たな訴訟の舞台は米国に

UM社が2015年に訴訟を起こした国は中国だけではありませんでした。米国でも円谷プロを訴え、米国での円谷プロによるウルトラマンシリーズの展開によって、損害を受けたと主張。『76年書面』の有効性の確認も求めました。これには円谷プロ側も反訴し、『76年書面』がニセモノであることの確認と、損害賠償を求めました。

米国の裁判制度は独特で、「ディスカバリー」という制度があります。互いに持っている証拠を裁判所から求められたら提出しなければならず、持っているのに持っていないとウソをついたり、提出を拒絶したり、提出を求められている書類を改ざんしたりすれば、それ自体が重い罪に問われます。

また、法廷に呼ばれているのに出廷しなければ、法廷侮辱罪に問われます。ソンポテ氏は結局出廷せず、『76書面』の原本も未だに提出していません。

昨年4月に円谷プロ全面勝訴の1審判決が出ていたのですが、12月5日、2審でも円谷プロ全面勝訴の判決が出ています。UM社には最高裁に上告する権利がありますので、円谷プロの勝訴が確定したわけではありませんが、覆ることはまずないと円谷プロ側は考えています。

米国訴訟2審勝訴が意味するもの

法律が適用される範囲は、一部の例外を除けば基本的にその国の中だけです。したがって、今後UM社がタイや米国以外の国でキャラクター商品の販売を大々的に始めれば、円谷プロは、またその国で訴訟を起こし、『76年書面』の真贋を争わなければなりません。

ただ、米国で訴訟をしたことによって、他の国の訴訟では絶対に出てこない、膨大な量の貴重な証拠書類を、円谷プロは入手できたに違いありません。今後も起きる可能性がある訴訟で、それは必ず生きるはずです。

グローバルコンテンツを持つ会社はその権利を守るため、強靱な体制を敷いています。円谷プロも旧バンダイが資本参加し、訴訟のバックアップをするようになってから、訴訟の形勢が改善したようにみえます。

権利を守る強靱な体制作りには、お金も時間もかかります。製品の価格にはそのコストも乗っているのだということに、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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