はじめに
スマホの登場で世界はなにもかも変わってしまいました。20年前は電車に乗ると、新聞や雑誌、本を読む人、ウォークマンで音楽を聴く人、なにをするでもなくボーっとしている人など、さまざまな人たちがいました。今では皆、スマホを持ち、画面の中の世界に夢中になりながら電車に乗っているわけです。
20年前の会社では「パソコンが使えない」ということが中年社員のコンプレックスでした。そして今、若い社員のなかには「スマホで育ったのでパソコンが使えない」という人が登場しています。
そのスマホが「ひょっとすると10年後にはなくなるかもしれない」と言われています。なぜそんなことが起きるのでしょうか? スマホの次にやってくる商品について解説してみましょう。
イノベーションの足をひっぱる日本の官庁
こんな話があります。携帯電話が普及し始めた頃、ある家電メーカーがiモードと連動してスイッチを入れたり切ったりすることができるエアコンを発売しようとしました。
ちょっと考えてみると、これはすごく便利な機能です。家に帰る1時間前に遠隔操作で自室のエアコンのスイッチを入れられれば、帰宅した頃にはすでに部屋が夏はひんやりと冷えているし、冬はぽかぽかに暖まっているわけです。
ところが官僚の横やりが入り、この商品の発売は中止されました。日本の法律では暖房装置のスイッチを離れた場所からONすることは「違法だ」というのです。
たぶん、勝手にストーブに火がついて火災が起きたら困る、というような古い時代の法律がまだ残っていたからでしょう。結局、その商品は外からスイッチを入れる機能は外して発売されることになりました。
今はというと、スマホで外からエアコンを操作できる商品が売られています。法律の抜け道として、学習リモコンを外から操作することで可能になりました。
エアコンメーカーが、スマホで外からエアコンを操作する機能を直接つけることは法律違反ですが、エアコンメーカーが販売したのではない学習リモコンを外から操ってエアコンをつけるのは法律に違反しないというわけです。
日本の官庁は細かい規制を入れてくるので、なかなか日本発の新サービスは発展しませんね。
そして、今このような商品が“未来を変える”として、世界中から注目を浴びています。
アマゾンから始まったスピーカー革命
2014年秋、アマゾンが「Amazon Echo(アマゾン エコー)」というスマートスピーカーを発売しました。この商品、実は先ほど触れた「遠隔操作できる学習リモコン」の進化系です。
円筒形のスピーカーをリビングに置いておけば、「寒いなぁ。エアコンの温度上げて」「テレビつけて」「タイマー、3分、スタート」と声に出すだけで、家の中の家電を操るさまざまな操作を賢いスピーカーがやってくれます。
この商品はスマートホームというコンセプトで発売が始まり、1年で300万台以上出荷されるヒット商品になったのですが、まだ当時の性能はいまひとつだったようです。
さて、そのスピーカーが2年間でずいぶんと進化しました。そして昨年、エコーを追うかたちでグーグルが「Google Home(グーグル ホーム)」を発売。今年はマイクロソフトが同じ分野の商品を発売するとしています。
実はこのスマートスピーカー、家の中の家電すべてを管理する「王様」のような商品になると言われています。家の中に1台、このような製品が存在すれば、ビデオの録画、防犯カメラの動作、冷蔵庫の中身の管理などさまざまな仕事ができるからです。
そして同時に、パソコンやスマホを陳腐化させてしまう恐ろしい商品かもしれないとも言われているのです。