はじめに

場を支配する?

さて、ロミオさんがパフォーマンスをするときに「等身大でいること」以上に優先していることがあります。それは「場の支配力を持つ」ということです。

場を支配するなんて難易度が高そうですが、私たちのスピーチやプレゼンにも取り入れられそうなので紹介します。

「場を支配する」ためには2つのことを意識します。その2つとは「脱力感」と「圧倒的な自信」です。これらのバランスをとって表現することが、聴衆の興味を惹きつけるカギだそうです。

スポーツや演劇でもそうですが、いいパフォーマンスをする人は肩の力が抜けていて、見た目以上に「脱力」しています。無駄な力は体のスムーズな動きを妨げ、見ている側にも緊張が伝わります。ただし、あまりに脱力し過ぎるとただのやる気のない人物に見えるので、適度なリラックス感を心がけましょう。

早口の意外な効能

2つめの「圧倒的な自信」なんて、あったら苦労しません! という声が聞こえてきますが、それほど心配はなさそうです。要は自信がありそうに見えれば良いということ。それには「ボディーランゲージ」と「声の使い方」がポイントです。

コミュニケーションにおいて表情やジェスチャーといった視覚情報は、伝わる情報のうちの55%を占めるといいます。その意味でボディーランゲージはとても重要です。効果的なボディーランゲージを身につけるには演劇を学ぶのが一番いいそうですが、ジェスチャーの示す心理的な意味を把握して活用するだけで十分です。有力な政治家やプレゼンターがよくやるしぐさの意味を調べて、真似してみるのもいいでしょう。

また、「声」については、抑揚をつけることがもっとも大事です。物語を朗読する役者の話し方などは参考になります。重要なポイントではゆっくり大きく話し、流すところは普通に話します。

さて、ここで冒頭の「早口」が再登場します。実は「早口で話す」ことはマイナス面ばかりではありません。熟練したスピーカーやメンタリストには、むしろ早口の人が多いそうです。聞き手は語尾で話の内容をある程度把握するため、ゆっくり話すことのメリットはそれほどないのだとか。

ならばむしろ、早口をベースにして、本当に重要なところだけを「ゆっくり大きく」話すように抑揚をつけると、より印象的なスピーチにすることができそうです。


メンタリズムは(トリックも含みますが)心理学的エビデンスをベースにした心理術であり、ただのパフォーマンスとは違うものです。本書はメンタリズムの歴史や本質から、コミュニケーションや恋愛などにも使える実践的テクニックまでを解説している点で読み応え十分。ぜひ本書で、メンタリズムの深い世界に触れてみてください。

メンタリズム 最強の講義 ロミオ・ロドリゲス Jr. 著

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(この記事は日本実業出版社からの転載です)

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