はじめに

ガソリン需要は戻らない可能性

英国の大手石油会社によれば、世界の原油の約40%が乗用車、トラックなどのガソリンなど向けの需要です。経済封鎖等による2020年に予想される世界経済の落ち込みは、IMFなどのエコノミストの最新の予想が示すように、戦後最大規模のマイナス成長になるとの見方がほぼコンセンサスになっています。

また、経済停滞が深刻になるだけではなく、同時に人が移動する機会が劇的に減るとみられます。物流活動がなくなることはありませんが、普段の生活またはビジネスにおいて外出を控える行動が常態化すれば、自動車を中心にガソリン消費は大きく減少するでしょう。

いずれは世界の経済活動はコロナ前まで戻っても、自動車を中心としたガソリン需要は同様に戻らない可能性が十分あると筆者は考えています。

これは、交通渋滞が緩和されるという意味で、ポジティブな側面があるかもしれません。反面、コロナ後の世界では、エネルギー、自動車、航空などの産業の市場規模が大きく変わることを意味します。

コロナ後の世界に関しては分からないことが多いですが、2008年のリーマンショックによる景気後退よりも、経済・社会のあり方が変わり、それに伴い産業構造が大きく変化すると筆者は予想しています。

このため、原油市場の妥当な価格水準を推定するのは難しいですが、現在の10ドル台で今後長期にわたり推移してもおかしくない、と筆者はみています。

一方、原油以外の商品市況をみると、銅、鉛など工業用の原材料の取引価格は、原油価格ほど下落していません。

工業用原材料価格は、製造業の生産活動をより的確に反映しますが、足元で2016年初の水準まで下落しています。これは、突出した原油価格下落が、コロナ後の世界経済の大きな変化が起きていることを示唆しています。

依然割高な米国株市場

最後に、原油価格ほどではないですが、工業用原材料価格が、2015年のチャイナショックによって世界経済が停滞した同水準まで下落していることをどう考えるか。この価格下落と比べて、3月以降の米国株の調整はかなり小幅です。

米株市場は20日からやや調整していますが、年初からの下落率は13%程度(4月22日)で、2019年年央の水準を保っています。商品市況が示唆する今後の世界経済の落ち込みによって、企業業績が半減以上で減少する可能性が高いことを踏まえると、米国株市場は依然割高であると筆者は考えています。

<文:シニアエコノミスト 村上尚己>