はじめに
株式を相続人以外に譲るには? その注意点
そして懸念材料の2点目、引き継ぐ株式の評価額。
裕二郎さんは会社の株式を100%所有していて、裕二郎さんが会社を設立したときの資本金は300万円。1株5万円でした。当初1株5万円だった株式が今現在も5万円の価格とは限りません。裕二郎さんは頑張って会社を大きく発展させてきました。会社が成長すればするほど、会社の株式の評価は高くなっていくのです。
会社の株式1株当たりの株価を評価してみると1株50万円の評価になり、会社の設立当初より10倍、3000万円の価値になっていました。3000万円もの価値のある株式を誠二さんが遺言で引き継ぐとなれば相応の税金もかかってきます。その税金が負担できるのかという問題も同時に出てくるのです。
裕二郎さんの個人財産の中に含まれる会社の株式3000万円。会社の株式以外にも財産があるとはいえ、大きな割合を占めるのは確実です。相続人となりうる3姉妹は会社株式以外の財産を分けることになるでしょう。会社を存続させるためとはいえ複雑なお気持ちがあると思います。
今回、裕二郎さんのケースは、残された時間があまりなく、必要最低限これだけはということで会社株式を誠二さんへ遺贈するという遺言書を書くことにとどまりました。他の対策を考えるには裕二郎さんの気力、体力、そして時間も足りなくなっていました。
事業継承、どこから手をつければよい?
では、事業承継はどうやって進めていけばよいのか。
まず最初は現状把握から始めます。今回の裕二郎さんの会社のように会社の業績が良い場合、株価は高くなっていると想定されるでしょう。その株式を渡していくには多額の税金がかかるかもしれないと不安に思っていらっしゃる経営者の方も多いのではないでしょうか。
しかし、漠然と心配しているだけでは何も進みません。現状把握の手順として、まず税務上の会社株式の株価の算定とともに相続税の試算を行います。株価算定には専門的な知識が必要です。定期的に税理士等の専門家に株価算定を依頼するとともに、会社株式以外の個人財産も含めた相続税の試算をして、相続税がどのくらいになるのかを把握しましょう。
会社株式の承継の方法には、贈与・相続・売買がありますが、いずれの場合も、株価は低いほうが税負担・資金負担は少なくなります。会社の今後の事業計画も織り込んだ株価の将来推移を試算し、会社株式の移転時期を検討するのが良いでしょう。