資産価値がほとんどないからこその問題も。「負動産」の相続手続きって、なにが大変?
資産価値によって変わる手続きの重さ
2024年4月から始まった相続登記義務化により、故人名義の不動産は、存命の相続人の名義に変更しないと、罰則が科せられようになりました。特に不動産の登記(所有者の登録)は、義務ではなかったこともあり、何代も前の先祖の名義のままになっているケースも珍しくなく、相続手続きの重要性と大変さが再認識されています。ところで、相続にまつわる問題といえば、「財産をどうやって分けるか」という財産分与、遺産分割の問題、「多額の税金を納めなければならない?」という相続税の問題などは、メディア等でもよく取り上げられ、イメージも湧きやすいものだと思います。一方、相続手続きそのものについては、「なんとなく大変そう、面倒くさそう」といった漠然とした印象はあっても、それがどれほど大変かは、あまり具体的に触れる機会がないと思います。そこで、今回は不動産——その中でも、住宅や賃貸アパート、市街地の宅地といった資産価値のある不動産ではなく、山林や農地、長らく放置状態の空き家といった、資産価値がほぼなく、売却も困難と思われる”負動産”の相続手続きに注目して、どんな大変なことがあるのかを見ていきたいと思います。
3カ月・10カ月・3年…相続の【3つの期限】過ぎたらどうなる?
それまでにやるべきことを解説
人が亡くなると相続が発生します。そして、相続人が2人以上いる場合は遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)を行わなければ、亡くなった人の財産を引き継ぐことはできません。遺産分割協議に期限の定めはありません。ただし、相続手続きにはさまざまな期限があります。そのため、早めに遺産分割協議を行なうほうが良いでしょう。今回は、相続にかかわる以下の3つの期限について説明しましょう。【1】3カ月:相続放棄【2】10カ月:相続税申告【3】3年:相続登記(不動産の名義変更)
認知症になると銀行口座が凍結される?親が診断を受ける前にやるべき5つのこと
知っておきたい「財産管理委任契約」と「任意後見契約」
高齢化が進むことによって認知症患者も増加し、2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になると予測されています。患者数が増えるとともに「認知症になったら口座が凍結される」この言葉をよく聞くようになりました。なぜ認知症になると銀行口座を今までのように自由に使用できなくなるのでしょうか。また、将来に備えてどのような準備が必要になるのでしょうか。認知症とは、さまざまな原因で記憶や思考などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすことをいいます。認知症の症状は様々ですが、たとえば何度も同じ話を繰り返したり、約束を忘れたりといった自分が行った行動を覚えていないということが出てきます。そして、自分の行動を覚えていないということは、お金のトラブルに巻き込まれることも増えてくる可能性があるのです。
無価値な不動産こそ、売却処分は慎重にすべき…高齢者を狙う「原野商法の二次被害」とは?
二次被害に巻き込まれないための対策
「原野商法」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。原野商法とは、値上がりする見込みがない原野や山林を、ありもしない開発計画などをちらつかせて、「今のうちに買えば、将来確実に土地が値上がりして儲かる」と錯覚してしまう説明によって、青田買いをさせるものです。現代であれば、そんなうまい話ないだろうと冷静に判断できそうなものです。しかし、原野商法が多発していた1970年代から1980年代は、高度経済成長に伴うバブル期で、さまざまな物価は上昇基調にありました。その影響もあって、「土地神話」という、将来ずっと値上がりし続ける低リスク高リターンの金融資産という価値観が後押しし、このような被害が相当数あったものと予想されます。そして平成・令和に入り、今度は「原野商法の二次被害」というトラブルを耳にするようになりました。そして、この二次被害は、年々増加の一途を辿っています。相談窓口である国民生活センターに寄せられた二次被害に関する相談は、2010年度までは年間500件以下だった一方、2013年度以降、ほぼ毎年1,000件を超えており、問題は年々深刻になっています。そこで、今回は・原野商法の二次被害とは
持っていた山林で5000万円の賠償判決…相続した土地でも起こりうる所有者責任のリスク
2つの対処法とは?
2017年3月、熊本市内で走行中の車に倒れた木が直撃し、運転手が死亡する非常に痛ましい事故が起こりました。そして、運転手の遺族は、熊本市と倒れた木が生えていた山林の所有者に対する損害賠償をめぐる訴訟を提起し、2022年12月、約5000万円の賠償を命じる判決が確定しました。この倒木事故は、判決にかかる関連資料を見る限り、特に工事作業中の倒木といったものではなく、老木の倒木か、強風等をきっかけにした倒木など、何らかの自然発生的な原因による倒木だったようです。不慮の事故にも見えますが、裁判所は5000万円もの賠償命令を下したのです。言い換えれば、不動産の所有者は、法人であろうと一般個人であろうと、誰もが”ある日突然、思いがけない事故で、自分が負いきれないような責任を負うリスクがある”のです。そこで、この記事では、・土地の所有者責任はどのようなものがあるのか・所有者責任リスクを、どう対処したらよいかについてみていきたいと思います。
3月に始まった【戸籍証明書等の広域交付】相続手続きはどれだけ楽になる?取得の際の注意点も
できること・できないことを行政書士が解説
2024年(令和6年)3月1日から戸籍証明書等を最寄りの市町村窓口で取得できる「広域交付」が始まりました。広域交付とは、欲しい戸籍の本籍地が全国各地にあっても最寄りの市町村窓口でまとめて請求、取得ができるようになるというものです。
1円でも売れない…急増する「限界ニュータウン」の現状
所有者も四面楚歌状態に
全国各地で、「寂れてしまった住宅地」が増えつつあります。例えば、・古家が数軒建つ程度で、大半が雑草の空き地区画になった住宅分譲地・空き部屋だらけになってしまった住宅団地(アパート)などです。こういった住宅地は、最近では「限界ニュータウン」と呼ばれることもあります。言葉の響きからも、いわゆる”まちとしての発展の限界”や”限界集落”と化したネガティブなイメージが想像できます。今回は、この「限界ニュータウン」について、・限界ニュータウンが生まれた社会的背景・限界ニュータウンの所有者の現状についてみていきたいと思います。
2024年4月1日から相続登記が義務化! 「罰則よりも大きな影響を及ぼすもの」とは?
親族内の”臭い物に蓋”に直面せざるを得なくなる?
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されます。これは、相続にまつわる諸手続きの中でもかなり大きな法改正として話題になっています。なぜそこまで話題になっているかというと、例えば「祖父母など大昔の先祖の名義のままになっている山や畑の名義変更(=相続登記)が済んでおらず、実は自分がその責任を負っていた」といった、意外なほど多くの人がこの法改正の対象者になる可能性があり、突然、”寝耳に水”とも言える罰則の対象になるリスクが生じることになったためです。そこで、この記事では・相続登記とは何か・相続登記の義務化によって、どんな影響が生じるのかについてご紹介します。
うっかりして税務署から指摘も…相続税申告の際に見落としがちな【暦年贈与】と【相続時精算課税贈与】って?
制度を利用する時の注意点は?
亡くなった人(被相続人)から相続や遺贈により取得した財産の価額の合計が一定額(基礎控除額)を超える場合、相続税の課税対象となり相続人等は相続税申告が必要です。相続税申告には期限が決められており、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に被相続人の住所地の税務署へ申告し、納税しなければなりません。基礎控除額は、3,000万円に法定相続人1人につき600万円を加算した額です。例えば3人家族(父、母、子)の父が亡くなると法定相続人が2人です。この場合、3,000万円+(2人×600万円)=4,200万円までの相続財産なら相続税がかからないということです。
終活・相続対策に入る前に必要なのは銀行口座と不動産の確認!やるべきことを終活カウンセラーが解説
「遺言書」「任意後見契約」「信託」の前に必要な初めの一歩
今、「遺言書の書き方」や「認知症対策には任意後見契約」、「不動産には信託」などの終活・相続対策の情報はたくさん出ています。もちろん、これらの対策を行なっておくことは大切です。ただし、これらを進めるには、それぞれの内容を理解した上で自分で進めるか、専門家の助言を得ながら進めていくことになります。まずは、各対策がどんなものか、概要を理解しましょう。
該当したら即検討!直ちに処分すべき不動産4選
使い道がない不動産は要注意
不動産は、銀行預金、保険商品、株式、外貨など、さまざまな金融資産の中でも、比較的安定的な資産として位置づけられ、特に高度経済成長期には「土地神話」と呼ばれる”不動産は値上がりし続ける”と信じられていたほどでした。しかし、バブル崩壊や人口減少といった要因によって、今日では「不動産=安定資産」とは必ずしもいえない意識の方が常識になりつつあります。もちろん、都市部の不動産は高止まりが続き、不動産投資やマイホーム購入のいずれも、物価低迷期に比べると信じられないような高値になっている側面もあります。その一方で、特に地方の不動産を中心に、需要と供給のバランスが崩れ、資産価値がどんどん目減りしている不動産も増えており、こういった不動産の方が圧倒的多数といっても過言ではないほどになってきています。そこで、この記事では「直ちに処分すべき不動産」を4つご紹介したいと思います。該当する不動産をお持ちの方は、ぜひ早期処分を検討することをお勧めします。
終活・相続で「遺言書」を作る前に必ずやらなければならない「推定相続人と財産状況の確認」
まずは「現状の全体像」を把握しよう
終活・相続でどんな準備をすればよいかをネットで調べると、「遺言書」や「家族信託」、「節税対策」に「不動産を活用する」など、たくさんの方法を見つけることができます。もちろん「遺言書」や「家族信託」、「不動産の活用」は、終活・相続において必要な方法ですが、どれを取り組むにしても、その前に「現状の全体像を把握すること」が大切です。
資産の凍結、相続人の揉め事…親が認知症になると何が起きるのか?
財産管理への備え
年齢を重ねるほど発症する可能性が高まる認知症。高齢化が進むなか、誰もがなりうる認知症がどのような病気なのか、一緒に確認していきましょう。
相続してしまうと「一生手放せない負動産」に…。売買が強制却下される意外な不動産とは?
知られていない、不動産取引の”例外”
日本では、不動産は自由売買が原則とされています。つまり、「売り手」と「買い手」が話し合って、不動産の売買金額や取引条件さえ固まれば、たとえ家族や隣人といった第三者が「その売買はやめた方がいい!」「その売買は許さない!」といった反対意見があったとしても、その売買は成立して、買い手の名義に所有者を変更することができます。しかし、その中で唯一、売り手と買い手の間では売買が成立しているのに、その売買は「許さない」として手続き途中で却下されるケースがあります。その不動産とは、田んぼは畑などの「農地」です。ちなみに、この場合、「交渉次第でなんとかなる」といった甘いものではなく、それを覆すことも難しい、厳しいものなのです。意外と知られていない、「自由売買を許さない」特殊なケース。そして、これは思いのほか身近な不動産であり、農地の売却処分に困っている不動産所有者がたくさんいます。今回は、なぜこのような不思議なルールがあるのか、そして、もしも自分がこれに該当して売却処分に苦しむことになってしまったとき、その対策はあるのかを見ていきたいと思います。
議論が「誰が一番愛されていたか」になったらキケン−−相続が泥沼化する典型例とは
法定で見る相続問題
夏と言えば、お盆休みを利用して墓参りをしたり実家に帰省したりと、普段は離れて暮らしている家族が実家や祖父母の家に集まったり、親戚一同と顔を合わせる数少ない機会ではないでしょうか。そんなとき、終活についての話題が祖父母や両親から出てくることも、最近ではそれほど珍しくないと思います。子どもの方から「近くに引っ越してこない?」と提案したり、「家の片づけをした方がいいんじゃない?」と提案したりすることもあるでしょう。世間話のつもりのちょっとした会話から、深刻な相続問題に発展することも珍しいことではありません。お金が絡むと、親しい親族同士でも揉めてしまい、なかには「相続が争続になった」という話も聞きます。今回は、実際に法定で争われた2件の相続問題から、トラブルを防ぐにはどうすればよいか考えていきたいと思います。
よゐこ有野、相続で揉めるケースに驚き「莫大な遺産があって、じゃないんだ」
終活を考える(4)
お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年7月は社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーの井戸美枝先生に、終活について伺いました。今回は、「相続と遺言」について。遺言書とエンディングノートの違い、ご存知ですか?
よゐこ有野「いやらしいわぁって…」親への【終活】の切り出し方に四苦八苦
終活を考える(3)
お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年7月は社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーの井戸美枝先生に、終活について伺いました。今回は、「終活の切り出し方」について。スムーズに話を進めるには、どのように切り出すのがよいのでしょうか?
家族関係次第で最適な選択肢が変わる 相続でモメやすい不動産を分ける時の三つの方法
換価分割・共有分割・代償分割のメリットとデメリット
相続で、自宅などの不動産をきょうだいたちと分けなければならないとしたら、どうすればいいでしょうか。今回は、相談者の斎藤さんの例から考えながら、不動産などの分けにくい財産を分ける時に役立つ三つの方法について解説します。