はじめに
主要市場で予想PERが軒並み上昇
米国の1〜3月期決算は、S&P500ベースで前年同期比12%程度の減益で着地したもようです(5月29日時点のリフィニティブ調べ)。4〜6月期も現時点で同40%超の減益が予想されており、減益のトレンドはしばらく続きそうです。
それにもかかわらず、足元の株式市場は目先の業績悪化を気にかけている様子はありません。むしろ。2021年における30%超の増益に期待を寄せるかたちで、株価は堅調な推移を見せています。
その結果、S&P500の予想PER(12ヵ月先予想ベース)は、5月に20倍を超えました。これは2000年代初めのITバブル期以来の高水準です。業績見通しが流動的であるとはいえ、短期間で急上昇した予想PERに警戒感を覚える向きは少なくないでしょう。
予想PERの上昇は、米国株以外でも多かれ少なかれ似たような状況が発生しており、日本株の予想PER(TOPIXベース)も15倍を超え、新型コロナショック前の年初の水準を上回っています。また、英国やドイツなど欧州株についても同様です。どの市場も感染拡大の一服と、今後の景気回復をかなり前倒しで織り込んだ状態にあるといえるかもしれません。
しかし、実際の経済が乗り越えるべき課題が多いこと、(特に日本株の場合)今期業績の悪化をアナリスト予想が十分に織り込んでいない可能性があること、などを考慮すると、このまま株価が一本調子で上昇していくと考えるのはやや楽観的と思われます。
6月の株式市場は、米国はもちろんのこと他市場についても、年後半にかけての相場上昇を睨んだ値固めの時期と位置付けられます。
リスク要因は米中対立の再激化
新型コロナウイルス拡大の震源地とされながらも、いち早く感染を収束させ、経済活動の再開に動きだしているのが中国です。4月の主な経済指標では、前向きな変化が確認され、工業生産は4ヵ月ぶりに前年同月比でプラスに転じました。
景気回復は依然として道半ばですが、主要国の景気が軒並み落ち込む中にあっては、健闘しているといえるでしょう。新型コロナ後の世界を占ううえでは、中国の経済立て直しが一つのモデルケースとなるかもしれません。
ただ、当の中国も内需に頼った景気回復には限界があると見られ、外需回復が重要なカギを握ります。そうした観点からすれば、中国の独走というよりは、主要国の本格的な経済活動再開と足並みを揃えた回復が有力視されます。
中国では例年3月に開催される全人代(全国人民代表大会、日本の国会に相当)が、日程が延期されていたものの、ついに5月に開催にこぎつけました。2020年の中国経済は量的な経済成長を追うことよりも質的な生活の改善が志向される可能性が高そうです。
その上で、新型コロナウイルスでダメージを受けた経済に、今後どのような追加的な政策を施していくかが注目されます。さらに、中国への強硬姿勢を強める米国に対して、再び対決姿勢を鮮明にしていくかどうかも、相場の焦点になっていくとみられます。