はじめに

世紀の名車にまだまだ乗れるんです

つまり、小さなこの4人乗り軽自動車こそが、現在のマツダの4輪自動車づくりにつながる原点というワケです。新開発されたR360クーペは、1960年の5月に発表されました。マツダが威信をかけて開発したクルマは、戦後、初めて“クーペ”を名乗り、大人ふたりに子供2人が乗れる2+2といった4人乗車として登場しました。確かに全長は3メートルにも足りず、356ccエンジンはわずか16馬力のクルマでしたが、ようやくマイカーという存在に目覚めた人々にとって、神々しく映ったはずです。

アルミニウム合金、マグネシウム合金、プラスチックなどの素材を多用し、軽量化対策も万全

当時の最新技術を採用し、徹底した量産化によって製造効率を上げ、価格はマニュアル車で30万円、トルコン車(AT車)で32万円という、これまた画期的な低価格を実現しました。ちなみに1958年に登場したスバル360は36万5千円でした。当時の大卒の初任給が1万3千円ほどですから、現在の価値に換算すると約550万円以上ということになります。

それでも夢にまで見たマイカー、みんなけっこう無理をしながらも、この愛くるしいクーペに飛びつき、発売前に早くも4,500台の大量受注を記録。発売後は人気がさらに高まり、8月には月販2,000台を突破、12月には当時としては記録的な月販4,090台を記録しました。なんとデビュー年の1960年中の累計生産台数23,417台は、軽乗用車の生産シェア64.8%にも達するものだったといいます。

もちろん、価格が大きな人気の要因でしたが、さらに先進技術の高さにおいては現在でも高い評価を得ています。例えばエンジンは軽乗用車初のマグネシウム合金を多用した4サイクルエンジン、軽量モノコックボディ、軽合金ボンネット、それにより達成できた当時の国産車最軽量の車重380kgなどなど、燃費と走行性能の向上に効果をあげました。

さらに、快適な乗り心地を達成した4輪独立懸架方式の採用など当時としては先進技術の固まりだったわけです。

そしていまだに魅力とも言えるのが、2+2という狭いキャビンを包んだスタイリッシュで機能的なクーペフォルムです。当時は日本のカーデザインの最先端をいくものとしてこれまた高い評価を得たのですが、そのデザイン性の高さは現代でも通用するほどです。ここに現在のマツダデザインの源流があるのかもしれません。

遊園地にあるようなデザインが人気となりました

実はこの愛らしいスタイル、現在でも入手できるのです。時折、中古車売買のコーナーには顔を見せます。デビューしたときからヒットしたクルマだけに、まだ元気に生息している個体がまだ流通しているのでしょう。それでもミュージアムに行けば“手を触れないで下さい”と注意書きされるほどの希少車であることには変わりません。