はじめに

お金がないと気持ちもおかしくなっていく

貧すれば鈍すると昔からいいますが、お金がないというのは人の心も弱くします。

「不安でたまらないんですよね。実家に帰ればいいのかもしれませんが、兄一家がいて、両親も気を遣いながら暮らしています。私の居場所がないことは年に1回帰ったときでさえ感じている。仕事を失って帰るなんてことができるわけもないんです」

コロナ禍で心配した母から電話がかかってきたときも、仕事がなくなったとは言えなかった。そもそも両親には、卒業後に就職した会社をやめたことさえ話していないといいます。入院したときも知らせませんでした。

「大学に入って上京したことで、もう私はあの家からは独立した人間なんです。だから頼ることはできない」

アルバイトと彼からのお金でやりくりする日々

自粛期間中はコンビニのバイト以外に、ほとんど家から出ることはありませんでした。まれに彼が来てくれるだけの日々で、カヨさんは孤独感が募っていったといいます。

「彼にもうら1万円で2週間くらい食費をまかなって。孤独と惨めさで苦しかった。いっそ生きていたくないと思った夜もたびたびでした。6月くらいでしょうか、派遣会社といろいろ話して、休んでいた時期の補償が少し出ることになったので、そこから少しずつ気持ちも回復していったんです」

自分への同情なのか…

7月から派遣の仕事も入ってくるようになりました。今は短期の仕事を中心にこなしています。同時期、彼から結婚したいという話がありました。

「でもね、同情からじゃないかと思うんですよ。私は彼には愚痴らないようにしていたけど、つらそうな顔をしていると言われたことがあって。見るに見かねて結婚という言葉をうっかり出してしまったんじゃないかと思ってます。だから彼には、私の仕事がきちんと回復して、前のようにデートできる時期がきたら、改めて考えようと言っているんです」

本来なら、飛びつきたい提案だそうです。それでも、この状況で結婚するのは「逃げでしかない」とカヨさんは考えているとか。彼を好きならば、たとえ逃げに見えてもいいのではないかという気もしますが、彼女自身が納得できないのでしょう。

「もしかしたら結婚のタイミングを逃してしまうかもしれません。彼は今も、結婚してから仕事のことを考えてもいいんじゃないかと言ってくれてる。そうかもしれないけど、どこかで自分の食い扶持も稼げないのに結婚してしまったら、きっと後悔するという思いもあって。意地なのかなあ」

彼と結婚すれば、借り上げの社宅マンションに住めるので、とりあえず今の窮状からは脱することもできます。そうしたほうがいいのかもしれないと思いつつ、経済的な自立をあきらめてはいけないという思いにもかられているのです。

「人生、簡単にはいきませんね。つくづくそう思います」カヨさんの苦悩は、多くの女性たちが抱えるつらさなのかもしれません。