はじめに
男性関係にも悪影響が
そんなマリコさんですから、好きな人ができたときもお金で歓心を買おうとしました。
「学生時代、サークルの先輩を好きになったんです。でも先輩はアルバイトに忙しくて、デートに誘ってもなかなかうんと言ってくれない。ただ、私もお金で気持ちを買うのはいけないという気もあったので、あるとき、『先輩。たまたまアルバイト代が入ったのでいつもお世話になっているから焼き肉奢りますよー』と軽く言ったんです。そうしたら先輩、食いついてくれました」
アルバイト代が入ったというのはもちろんウソですが、先輩は疑わなかったようです。それをきっかけに、マリコさんはときどき先輩を誘っては奢り、誕生日には彼がほしがっていた高価な万年筆をプレゼントしました。
「お金が人をダメにするって本当ですよね。その後、先輩に彼女がいると聞いて抗議したんです。そうしたら先輩、『だってきみとはつきあってないじゃん』って。私はてっきりつきあっていると思ってた。だって週に1回は会っていたし、先輩が私の部屋に泊まりに来ることもあったんですよ」
すると彼は、「お金持ちのお嬢さんの時間つぶしにつきあっただけ」とひどい言葉を残して去っていきました。
「私は優しさと愛情がほしかっただけ。でもそれはお金では買えない。どうしたらいいかわかりませんでした」
ついついお金を払ってしまいそう
大学での成績もよかった彼女は、有名企業に就職しました。もう親からの送金には期待できません。きちんと自立しなければと思いながらも、彼女は同期との会合にもつい自分が支払ってしまいそうになったりしたそうです。
「お金を払うとかえって友情や愛情はついてこない。それはわかったけど、じゃあ、どうやって人間関係って築けるのだろう、どうしたら好かれるのだろう。それがわかりませんでした」
一生懸命、仕事を覚え、自分の意見もはっきり述べると、彼女は上司に信頼されるようになっていきました。出過ぎてはいけないと思って控えめにしていたので同僚や後輩からも慕われたといいます。
「人間関係のコツみたいなものがやっとわかってきたんですよね。だけど恋愛はできない。好きになるとやっぱり歓心を買いたくて、すぐに奢ったりしてしまう……。そこで、ある上司に相談したんです。彼は10歳年上、バツイチ独身でした」
何がどうなるか人生はわからないものです。その彼とマリコさんは恋愛関係になりました。
「本当は私、上司としては信頼していたけど男性として魅力を感じていたわけではないんです。ただ、彼はすごく私を大切にしてくれた。お金を介在させなくても愛されることはあるんだとわかった気がしました」
体調や気分を気にかけてくれたり、毎日のように連絡をくれたり。会社では素知らぬ顔をしていましたが、プライベートでふたりがつきあっていることはすぐに周りにも知られました。