はじめに
「ミライ」は走りだけじゃない
ただ個人的に言えば、このクルマはスポーツサルーンとして楽しむ方を選択したくなりました。実はテストでミライ・コンセプトを走らせたのは富士スピードウェイのショートコースです。発表前ですから一般道では当然無理ですが、目いっぱいアクセルを踏み込んでプレミアムスポーツサルーンとしての実力を試して下さい、というワケです。正直にいうとサーキットの路面は均一でグリップもいいため、ごく普通の使い勝手やフィーリングを試すには不向きなのです。
スポーツ走行でもしっかりと体をサポートするフロントシート
一方、限界を試すには好ましく、クローズドですからテスターもガンガン、頑張って走ることができるのです。それほどスキルの高くない私でも、速度などを気にすることなく走りを楽しむことができたのです。
水素タンクなどの重量物を前輪と後輪の間に配置することで、前後50:50の理想的な重量配分を実現していますし、高剛性ボディはなんともガッチリとしていて、気持ちのいい直進安定性と操縦安定性が味わえました。そしてステアリングのフィーリングはヨーロッパのスポーツサルーンといった感じで、なんとも楽しいひとときだったのです。
こうしてごく普通のスポーティサルーンとして楽しむ以外に、ミライのFCスタックで発電した電気を供給する外部給電機能も備えています。つまりオートキャンプなどのレジャーだけでなく、災害時などでは車内のAC100V(1500W)コンセントを使えば、一般家庭で400Wを消費すると考えると約4日間分の電力をまかなえます。
ボンネットを開けるとFCVの発電装置「FCスタック」があります
さらに少し大型にはなりますがDC外部給電システムを使うことで最大DC 9kWの大容量給電も可能となります。排気ガスを出さないFCVならではのクリーンな電力を作り出せるという強みもあるのです。
新型ミライの航続距離はWLTCモードで850kmを達成しています。そしてその生産能力は一気に月3000台へと引き上げられました。これまでの約10倍だそうです。価格は未発表ですが初代の723万円以内、補助金を使ってクラウン・ハイブリッドの中位モデルぐらいに収まってくれると、なんとなく現実味が出てくるのですが、どうなるでしょうか?
経済産業省の「水素・燃料電池戦略ロードマップ」ではFCVのシステムコストを引き下げるなどして2025年までにFCVとHVの価格差を、現在の300万円から70万円に抑えたいとあります。結果としてFCVを2025年に20万台、2030年に80万台に増やすというのです。そのためにも、間もなく正式デビューする2代目ミライには、大きな期待が寄せられているのです。