はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
夫とは死別しております。今のところ仕事も順調で、遺族年金の給付に預貯金も3,000万円ほどあるので、差し迫ったお金の心配はない状態です。お金が世の中で活躍しつつ、自分も満足できる持ち方について、なかなかこれといった方法が見い出せません。世の中の役に立つ投資がしたいと考えています。また、お金に困っている人を助けたいという思いを持っているなかで、行うべき投資について、参考になりそうな例があれば教えてください。
(50代前半 独身 女性)
内藤: お金を有効に活用して世の中の役に立たせたいというお考えは、素晴らしいと思います。
投資も立派な社会貢献のひとつ
お金を世の中の役に立たせるというと、寄付や援助といった方法を思い浮かべるかもしれませんが、私は投資も世の中の役に立つ社会貢献だと考えています。
株式投資や債券投資をすると、その資金は会社や政府の活動資金に使われることになります。例えば、株式会社が株式による資金調達によって新しい事業を成長させ、利益につなげることができれば、会社の企業価値が上昇し、投資した株式の価格も上昇します。
事業が成功し、成長しているということは、その商品やサービスが世の中で評価され、その価値に対する感謝が利益という形になって実現しているのだと考えられます。
逆に、世の中の役に立たない商品や、社会に悪影響を与えるような商品・サービスは、売り上げにつながりませんから、会社の利益にもならず、企業価値も上昇しません。
つまり投資でリターンが上がっているということは、プラスの価値を提供し、役に立っていることを意味するのです。
「寄付+投資」の被災地応援ファンド
寄付や援助をすることも、困っている人を助けることになりますが、自立ができず援助を受け続けているのでは、問題の根本解決にはなりません。
事業の立ち上げをサポートし、最終的に援助がなくても、世の中に価値を提供して利益を上げられるような状態にすることも大切だと思います。
寄付と投資のハイブリッドでお金を活用する1つの例として、セキュリテが行っている、被災地応援ファンドがあります。
これは、ミュージックセキュリティーズという会社が運営している仕組みで、理念に共感する人たちから少額の資金を集めて、東北の被災企業の復興資金として役立ててもらおうという試みです。マイクロファイナンスと呼ばれる手法の1つになります。
セキュリテのファンドに投資すると、資金の半分は支援資金として寄付され、残りの半分が投資資金として活用されます。
投資信託のような金融商品との違いは、自分のお金の使い方を自分で決めることができるということです。
また、株式投資とは異なり、活動している企業と「顔が見える関係」を作ることができるのも魅力です。資金を出している人のなかには、実際に現地に行って企業訪問し、資金面のサポーターとしてだけではなく、商品を購入する顧客としても企業を支えるケースも珍しくありません。
セキュリテに限らず、このような先進的なお金の活用法は、今後も次々に登場すると思います。このような仕組みを使ってみるのも、お金を有効に世の中のために活用する方法です。
情報収集をして、自分の考え方にフィットする仕組みを探してみてください。