はじめに

2021年1月より、欧州では現行の燃費規制が一段と厳しくなり罰則が強化されます。新たな欧州の燃費規制は、販売する全新車の二酸化炭素(CO2)排出量の平均が1km当たり95gに制限されます。2020年12月までは同130gであり、3割以上厳しくなります。

未達成の場合は、自動車メーカーに巨額の罰金が課せられます。CO2排出量が基準値の95gより1gオーバーするごとに95ユーロと域内販売台数を乗じた金額が罰金として徴収されます。

例えば、EU域内の新車販売台数が100万台で10gオーバーすると約1,200億円(1ユーロ=約124円)を支払わなければなりません。ドイツを代表する自動車メーカー、フォルクスワーゲンなどは、5,000億円以上の罰金を支払う必要があると言われています。

欧州の制度の罰則の厳しさは群を抜きますが、今後、世界的に環境規制が厳しくなります。ここにきて自動車メーカー各社が排気ガスゼロ車の代表である電気自動車(EV)へのシフトを加速させているのはこのためです。

EV市場が数年前の想定を大きく上回るペースで拡大することは間違いなく、2030年には年間2,000万台以上の規模に達する、という強気な見方が主流になりつつあります。2019年のEVの新車販売台数は200万台を下回ったので、今後10年で10倍以上に拡大することになります。

こうしたEV市場の急成長は、主要部品であるリチウム2次電池とEV駆動システム、そして積層セラミックコンデンサなど周辺部材にとっても大きなビジネスチャンスです。


EVをリードするテスラが電池単価6割減を宣言

EVで世界を牽引しているのは米国のテスラです。このテスラが9月に開催した投資家向け説明会、「バッテリーディ」で電池単価を約6割引き下げると宣言しました。一般に、電池はEVの車両価格の3割を占めるといわれています。したがって、6割値下げできたら車両価格を2割下げられる余地が生まれます。

テスラは、この電池単価の引き下げを単純にサプライヤーに値下げを要求するのではなく、高価なコバルトを使わない、ニッケルとマンガンだけの正極材料を使ったり、電池のサイズを大きくしたり、電池の構造や製造プロセスを見直したりして、合わせ技で達成するとしています。

テスラに電池を供給しているのは、日本のパナソニック、韓国のLG化学、そして、中国のCATLの3社ですが、この新型電池の開発について、テスラがパナソニックに協力を要請したと報道されています。

この報道が事実なら、テスラはパナソニックの電池についての知見を高く評価しているということであり、パナソニック本体、そして、パナソニックに材料を供給する住友金属鉱山や昭和電工マテリアルズなど素材メーカーにとって好材料といえます。