はじめに

デフォルトが増加しても中国の金融環境の悪化は限定的

デフォルトの多発を受け、足元では金融システム不安や信用縮小の発生など中国経済の先行きへの懸念を示す報道等も多くあります。しかし筆者は、今回のデフォルト多発による景気への悪影響は限定的であり、むしろ長期的には中国経済の安定的な成長に資すると考えています。

そもそも中国当局は、構造改革路線への転換と共に、景気の安定化と金融的なリスクの低減を提唱しています。中国の金融環境を確認すると、2020年第3四半期までの商業銀行部門の不良債権比率の上昇は限定的なものに留まっている上、信用指標にも大きな影響は見られません。

つまり、デフォルトの増加が金融環境を損なうような状況ではなく、現状では景気への悪影響は限定的であると言えます。

今後も、中国当局は景気への配慮を示しながら構造改革を断行するとみられ、デフォルトの増加は続くものの中国経済への影響は限定的なものに留まると考えます。

中国当局による政策支援はハイテク製造業へ集中か

中国当局は、2021年から始まる第14次5カ年計画において、内需の拡大を主軸とした新たな成長モデルを示しました。内需の拡大に向けて、ハイテク製造業の内製化とその国内消費の拡大を目指し、政策支援の対象を半導体や通信インフラなどハイテク製造業・新型インフラへ集中させ、合理的な企業の投資を促す方針を示しています。

これは、これまで政策支援に支えられて存続してきた企業にとっては逆風が強まることを意味しています。伝統的な産業分野の国有企業の経営環境悪化とデフォルトの増加は、今後も続く可能性が高いでしょう。

一方で、政策支援は優先投資対象であるハイテク分野へ集中させることができるため、より効率的な政策支援に繋がり、ハイテク技術内製化と内需の拡大に寄与すると考えます。

中国におけるデフォルトの多発というとネガティブな印象を抱きやすいものの、その背景に目を向けると、構造改革の断行やハイテク製造業への政策支援拡大といった、質の高い成長を政府が目指すという大きな流れがあります。

こうした取り組みの成否については依然として不透明感が強いものの、痛みを伴う構造改革の実行や成長の源泉となる産業の育成は中国経済の持続的な発展に必要不可欠です。取り組みが中国経済の質の高い成長に寄与することに期待しています。

<文:エコノミスト 須賀田進成>

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