はじめに
お金があるからこそできた選択
「離婚しよう。そう思いました。中学生と小学校高学年だった子どもたちに、この家を出ていかないかと尋ねると、ふたりともうれしそうに頷いたんです。ちょうどパート先で正社員にならないかと誘われていたのでそれに乗っかり、賃貸マンションを契約して、一気に家出を敢行しました」
離婚届にサインしてテーブルの上に置いておきましたが、夫が納得するはずもありません。調停も遅々として進みませんでしたが、義母がしびれを切らして「もう別れなさい」と言ったことで離婚が成立したのが1年前です。
「あんなに苦しめられた親からの遺産で、私はようやく自由を得ることができた。親に感謝するしかないんでしょうね。私がどうしても離婚したかったということで、夫からは養育費だけもらっています。別居したばかりのころ、言いたいことは言う、3人で話し合って仲良くやっていくことを約束してと子どもたちに言ったら、ふたりとも急に伸び伸びして表情まで変わったんです。今までどれだけこの子たちが抑圧されてきたんだろうと申し訳なく思いました」
今は本当に幸せとサトエさんは明るい笑顔を見せます。遺産がなかったら、この笑顔もなかったのでしょう。お金で解決できることは確かに大きい。せつない気もしますが、それが事実なのかもしれません。