はじめに
王道の直列6気筒エンジンのエレガントな走り
6気筒エンジンをスタートさせます。BMWの6気筒と言えばクルマ好きは“シルキー6”という表現が浮かぶと思います。スムーズなフィーリングは、まさに絹のような滑らかさで静かに回り、引いては走りの味もなだらかでエレガント。その魅力はBMWの大きな魅力として受け継がれてきました。一方で前後長の長くなる6気筒エンジンは衝突時のクラッシャブルゾーンが少なくなるため、いまではV型6気筒が主流ともなっています。この部分でもロングノーズがデザイン上で可能となり、BMWにとって良き伝統、王道の直列6気筒を貫けたのかもしれません。
アクセルを少し煽ってやると軽やかでスムーズですが、そこにしっとりとした雰囲気が加わった感じで回転を上げていきます。そんなエンジンの期待感もあり、アクセルを踏み込んでスタートします。低速からM440iならではの、力強さを感じながら、かと言って乱暴さもあまり感じることなく加速していくのです。フル加速体勢に移れば、Mの名にふさわしい、それなりの凶暴さも見せるのですが、普段使いではそこまでもって行かずとも、十分に俊足であり、交通の流れもリードできるのです。
そしてxDriveということですから4WDです。400馬力近いハイパワーを安定して路面に伝えるためには、当然の選択でしょう。何よりも路面をしっかりと掴んで安定感を感じさせながらアベレージの速い走りを披露できるのですから、何とも心強い仕様です。ハイパワーのクーペフォルムのクルマに対して、走りの面でも日常性を与えたわけです。
これで価格は1,025万円です。ベーシックな420i Coupéは2Lの4気筒エンジンを積んでいて577万円。スタイルだけを望むならもちろんこちらでも納得です。それに対してM440iは倍近いプライスを払う訳ですからハイパワー、ハイパフォーマンスは当然です。しかし、クーペというのは、このハイパワーを見せびらかすような走りをしたら、エレガントさが希薄になります。速く走るだけでなく、王道のクーペは自制心をちゃんと発揮できる大人のエレガンスも同時に手に入れる乗り物だと思っています。