はじめに

2021年も二桁成長が期待される米国株市場

――新しい年も、強い相場が期待できるでしょうか。

岡元:結論を言えば、来年も米国株は二桁の上げが期待されます。企業業績や経済が着実に上向いているところに、ワクチンも本格普及が始まりますし、ウイルスの脅威が遠のくにしたがって株価も上昇していくでしょう。NYダウのEPSは2021年には前年比で23%の増益が予想されています。

また、2020年はコロナ禍で企業が投資を一斉に抑制し、自社株買いも4月以降激減していました。2021年にはこれらの再開も見込まれ、株価上昇要因のひとつとなるでしょう。また、95兆円規模になるとも報じられているバイデン新大統領の追加経済対策も、株式市場を下支えすると期待されます。

ただ、経済が順調に回復すれば、利上げなど金融緩和の出口が意識され、株式市場がネガティブな反応を示す可能性はあります。しかし、米FRBは2023 年末までは政策金利を据え置くとしています。金融政策の正常化による悪影響はいつかは心配しなければならないことですが、2021年はそれには当たりません。

とはいえ、どんなに強い相場でも一本調子で上昇し続けることはありませんし、その過程で株価が調整する局面はあるでしょう。こうした局面は長期的にはチャンスであり、「下がったら買い」のスタンスで臨んでよいと考えています。

――2021年は民主党のバイデン新大統領の新政権がスタートします。バイデン氏は企業に対する増税や規制強化など、株式市場にネガティブな政策を打ち出していました。

岡元:マーケットが恐れていたのは、大企業への規制強化や増税です。しかし、大統領選と合わせて実施された上院下院議員選挙の結果、議会上院は共和党、下院は民主党が過半数を維持する「ねじれ」が生じることになりました。このため、結果的に株式市場にネガティブとなる政策を実現するのは現実的に難しいでしょう。

また、ここ数年の間、金融市場に暗い影を落としてきた米中関係に関しても、交渉上手なバイデン氏が敵対的な態度で臨むことは考えにくく、大きな摩擦に発展する心配も少ないと考えます。

GAFAMは「長期安定成長銘柄」

――これまでの米国株上昇は主にGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)がけん引してきた反面、これらの銘柄を除いた市場全体の上昇率は必ずしも高くはなく、”S&P495” と揶揄する声も聞かれました。新しい年は、GAFAMとそれ以外の銘柄の株価成長はどうなると予想されますか。

岡元:ご指摘の通り、ここまでの米国株上昇のドライバはGAFAMでした。ただ、この5社の株価上昇は、コロナ禍の有無にかかわらず収益を大きく伸ばしたことが背景にあります。業績成長に裏付けされた上昇であり、かつてのITバブルとはまったく異なります。

また、2020年前半まではグロース株が買われる相場が続き、バリュー株が出遅れる状況が続いていましたが、11月からはバリュー株が買われて相場を押し上げました。これは、グロース株の上昇が止まったというより、ローテーションがうまく回り始めたことを示しています。

GAFAM銘柄が2021年に大きな上昇が期待できる銘柄とは思いませんが、10年先を見て投資するべき長期安定成長銘柄であると考えています。もし、新しい年にGAFAMが下落するような局面が来たら、絶好の買い場でしかありません。

今後も新興国の人口増に伴って彼らのマーケットは拡大していきますし、経済成長が伴えば料金も上げられます。いずれも未来を見据えて次の一手を打てる企業群であり、大きな死角は見当たりません。

バイデン政権で規制が強まることを懸念する声もありますが、前述した議会のねじれで実現は難しいですし、それがなかったとしても最終的に規制をかけるという結論には至らないでしょう。今、GAFAMが戦う相手は中国であり、彼らに規制をかければ米国の国益に大きなマイナスとなるからです。

GAFAMに限らず、グロース株がまた大きく買われる局面は来るでしょうし、こうしたローテーションをこなしながら全体が上昇していく相場が続くと考えています。

――どんなセクターや銘柄に注目していますか。

岡元:これまで割安に放置されていたセクターに注目しています。具体的には、金融と石油です。

経済回復の恩恵を真っ先に受けるのは、金融機関です。政策金利は当面据え置かれても、経済の回復過程では長期金利は上がっていきます。この差が広がれば、金融機関の利ザヤが大きくなります。また、米国の金融機関は傘下に証券会社もあり、経済回復で投資が活発化した場合の恩恵も受けられます。

同様に、石油株も経済回復局面で業績改善が期待できます。2020年は景気低迷に加え、再生エネルギーに力を入れるバイデン氏の公約で売り込まれてきましたが、ここに見直しの動きが出てくるでしょう。

新大統領がいくら再生エネルギー活用に力を入れたとしても、石油の需要がなくなることはあり得ませんし、米国以外のグローバルな経済回復で需要はむしろ高まります。

――不安要素やリスクはどんなものがあるでしょうか。

岡元:最も心配しているのは、ワクチンに重大な副反応が確認されるような事態です。新型コロナ収束の切り札だったワクチン接種を進められないような事態が起これば、経済にも株式市場にも相当ネガティブな影響が出るのは避けられません。

また、ワクチンが普及しても期待したほどには経済回復が進展しないという事態も考えられます。ただ、これに関しても私は大きな心配はしていません。というのも、2020年春に米国で各州が順次ロックダウンに入っていた当時、ムニューシン米財務長官がテレビで、「今回、米政府の責任で経済を止めた。だから、政府が責任をもって元に戻す」と発言していたのが印象に残っているからです。

もし、経済回復の進みが遅いようなことがあっても、政府は強い姿勢で追加対策をしてくるでしょう。米国はそういう国であり、政権が変わってもこうした方針は変わらないはずです。

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