はじめに
ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイの株式の時価総額が1兆円を突破しました。報道によると、8月1日に発表した4~6月期の決算の好調ぶりが評価されたようです。その結果、株価が12%高と上場来高値を更新し、この日だけで時価総額が870億円増え、企業価値が1兆円を突破したのです。
それにしても4~6月期の商品取扱高(小売店の売上高に相当)が595億円、つまり年間売上が2,000億円規模の小売企業の企業価値が1兆円を超えるというのは、ある意味で画期的なことです。そもそも企業の価値とは何なのか? ZOZOTOWNの価値について改めて検証してみましょう。
日本を代表する小売企業に成長した「ZOZOTOWN」
スタートトゥデイの時価総額が1兆円を突破しました。2017年8月4日終値時点で1兆円以上の時価総額を持つ企業は138社あります。トップがトヨタの20兆円で、138位がヤマハ発動機のちょうど1兆円(1兆7億円)です。
時価総額が1兆円を超える「1兆円クラブ」会社は自動車、携帯や通信、銀行、IT企業などの業種に多く、小売企業の時価総額はそれほど大きくはありません。
セブン&アイの4兆円、ユニクロを運営するファストリテイリングの3.5兆円は別格として、小売業大手の時価総額はあのイオンですら1.5兆円近辺、百貨店業界の雄である三越伊勢丹は4,400億円、ZOZOTOWN同様に若者からの支持が強いマツモトキヨシは3,800億円と、小売企業大手というものは企業価値としてはたいして評価されていないのです。
そこで今回は、そもそも企業価値とは何なのか? そしてなぜZOZOTOWNがその中で群を抜いて高く評価されているのか? これらを検証してみましょう。
まず企業の時価総額ですが、これは「その会社を今、買おうとした場合の価格のこと」です。
企業価値とは「金の卵を産むにわとりの価格と同じ」
時価総額とはその会社の価格のことです。企業の議決権である株式をすべて購入すれば、論理上はその会社の完全な持ち主となります。そのため、上場企業の株価に株式の総数を掛ければ理論的な会社の価格が計算できます。これが企業の時価総額です。
そして時価総額とは、その会社の企業価値のことです。ただし会社の企業価値とは現在の価値だけではなく、将来にわたる、その会社の価値を足し合わせたものになります。これを簡単に説明するには「金の卵を産むにわとり」の話をするのがわかりやすいと思います。
会社を金の卵を産むにわとりだとしましょう。今、毎日1個だけ金の卵を産むにわとりがいたとしたら、その値段はいくらになるでしょうか? もちろん金の卵1個分では安すぎる。これから毎日、どれだけの金の卵を産むかによってにわとりの価格は決まるのです。
にわとりの一生の中で産卵期は2年ほどです。まだ若いにわとりなら金の卵700個分くらいで取引されるでしょうし、もう年老いていつ卵を産まなくなるか不安なにわとりなら金の卵30個分くらいの価格が妥当かもしれません。
実際に、株式市場では小売企業の価値をそのように考えているのです。具体例で見てみましょう。