はじめに

経済効果は30年に年額90兆円

政府は今後、全ての分野で技術開発から社会実装と量産投資によるコスト低減を図っていく方針です。この戦略により30年に年額90兆円、50年で年額190兆円程度の経済効果が見込まれています。

具体的には、グリーンイノベーション基金(10年間で2兆円)の設定により、技術開発から実証・社会実装まで一気通貫で支援していく方針です。これを呼び水に、民間企業の研究開発・設備投資15兆円程度を誘発。さらに大胆な税制支援により10年間で約1.7兆円の民間投資創出効果を見込んでいます。

ESG資金の呼び込みへ

パリ協定の実現には、世界で最大8,000兆円が必要だと試算されています(IEA、国際エネルギー機関)。再エネに加え、省エネなど着実な低炭素化(トランジッション)や革新的技術に対して、資金を供給すること(ファイナンス)が必要です。

政府は一足飛びでは脱炭素化できない多排出産業向けにロードマップを策定し、長期資金供給の仕組みと成果連動型の利子補給制度(3年間で1兆円の融資規模)や「グリーン投資促進ファンド」(事業規模800億円)を創設しました。

さらに、今後、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の位置付けを明確化し、企業による積極的な環境関連情報の開示を促す方針です。ESG投融資には、企業が気候変動のリスク・機会を認識し経営戦略に織り込んでいるか判断するための情報が重視されるためです。

日本政府による環境整備は、世界のESG資金3,000兆円の取り込みに繋がると期待されています。国内のESG資金は約300兆円と3年で6倍に増加。3大メガバンクも今後、30兆円の環境融資目標を掲げています。

カーボンニュートラルの実現に向けた企業の取り組みを後押しする力として、金融が果たす役割は大きいと言えるでしょう。

<文:チーフESGストラテジスト 山田雪乃>

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