はじめに
今はもう、小学生が動画を作って配信収入を得ることも珍しくありません。だからこそ、自分が作った動画の再生数を上げるには工夫が必要となり、根本的な企画・構成はもちろん、映像の撮り方や編集技術など、差別化ポイントは多岐にわたります。
そこで、テレビ朝日のプロデューサーを経て、「ABEMA」の立ち上げや上智大学でのテレビ制作講師などを務める鎮目博道氏の著書から「動画制作における差別化のポイント」を見てみましょう。
※本書は『「動画制作」プロの仕掛け52』の一部を編集・抜粋したものです。
人間は「音声」にとても敏感な生き物
あなたが大好きな映画を思い出してみてください。真っ先に思い浮かぶのは何ですか?
人それぞれ、いろいろなものが頭に浮かんでくると思います。でも、結構多くの人が、その映画のテーマ曲や名ゼリフを思い浮かべているのではないでしょうか?
大好きなワンシーンがもちろん思い浮かぶでしょう。でも、そのシーンが思い浮かぶ理由を少し考えてみてください。ひょっとして、印象に残る音がそこについていて、その音とともに浮かんできているのではないですか? たぶんそれが、自然なことなのです。
あまり私は生物学的なことに詳しいわけではありませんが、人間は音声にとても敏感な生き物なのだと思います。きっと太古の昔から、生物として身を守るために聴力が発達してきたのではないでしょうか。おそらく聴力は視力よりも身を守るのに役立ったのでしょう。
人間の眼は、顔の前面に2つついていますから、当然視界は限られています。前を見たままで真横のものは見えませんから、180度以下しかありません(どうやら両目で同時に見える範囲は120度と言われているようですね)。眼が顔の横についている動物よりもずいぶん視野は狭いようです。それに夜になって暗くなってしまえば、人間の眼はあまりよく見えないですもんね。
だからきっと、危険をまず察知したのは「耳」だったんじゃないかな、と私は思うわけです。遠くから聞こえる動物の鳴き声や「ガサッ!」という物音で敵が近づいてきたことを知り、そして目を凝らす。「あ、ライオンだ!」とそんな感じで警戒態勢を整えていったのではないでしょうか。
そして、同じように「鼻」もそうです。街角を歩いていると想像してみてください。「あれっ? 何か美味しそうな匂いがするぞ? この匂いは何の匂いだっけ?」とまず鼻が何かを感知して、それから私たちはキョロキョロと辺りを見回しますよね?
そして気づきます。「お! とんかつ屋さんかあ! 美味そうだなあ。食べて行こうかな」
このように、視覚は、聴覚や嗅覚などのほかの感覚よりも少し反応が遅いような気がしてならないのです。
いや、文系の私が勝手にそう思い込んでいるだけなので、正しいかどうかはわかりません。でも、何となくそんな感じで、きっちり耳を刺激してから目を刺激してあげないと「印象的な映像」にならないのではないかという気がします。