はじめに

日本でも「カーボンプライシング」を検討

日本では、昨年12月発表の「グリーン成長戦略」で、2035年までにすべての新車販売を電動車に転換させる方針などが示されたほか、カーボンプライシングに取り組む姿勢も明らかにされました。

今年2月から環境相の諮問機関で討論が再開され、経産省も「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法などのあり方に関する研究会」を新たに設置し、「炭素国境調整措置(CBAM)」(以下、国境炭素税)に関する有識者会議を開始しました。11月にCOP26を控え、夏から秋にかけて具体的な方針が出てくるでしょう。

国境炭素税の導入に向けた議論は、EUで最も進展しています。2019年12月に公表した成長戦略「欧州グリーンディール」で導入の検討を発表しました。2020年12月、欧州委員会はコロナ禍からの復興に向けた次期中期予算と復興基金で正式合意し、その3割を気候関連プロジェクトに振り向けることを決定。その財源として、国境炭素税の活用が検討されています。2023年1月1日までの導入に向け、2021年6月までに原案を欧州議会に提出する方針です。

さらに、米国では2021年1月にバイデン大統領が就任。公約でパリ協定への復帰や国境炭素税の導入に言及しました。

「炭素国境調整措置」(国境炭素税)とは

国境炭素税とは、炭素規制が緩い国・地域からの輸入品に対し、生産過程で排出された炭素量に応じて追加の負担を課す措置です。導入によって、国際的な競争条件が揃い、厳しい排出負担による自国企業の国際競争力の低下を防ぐことが出来ます。

また、企業が自国よりも排出規制が緩い国へ生産拠点を移すことで結果的に世界全体の炭素排出量が減少しない「炭素リーケージ」の発生を防ぐことも出来ます。

一方、事実上の関税強化とみなすこともできるため、世界貿易機関のWTOルールと整合性がとれるか、問題視する声も上がっています。

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