はじめに

「ワクチン相場」がいずれ日本にもやってくることを期待

最近の世界の株式相場では、欧州株の堅調さも目につきます。昨年の相場回復局面では、米国株や日本株に大きく後れをとってきた欧州株ですが、ここにきて巻き返しを図っています。年初来の株価パフォーマンスで比べると、好調な米国株と肩を並べるか、国によっては米国をアウトパフォームしているところもあります。

そうした堅調な株価の戻りを可能にしているのが、新型コロナのワクチン普及と感染の沈静化、さらには経済再生への期待であると考えられます。アナリストによる企業業績予想の修正動向を数値化したリビジョン・インデックスを見ると、直近で欧州の値が大きく改善している様子が確認できます。これが堅調な相場の一つの根拠になっていると推察されます。米国といい、欧州といい、やはりワクチン接種の広がりは株式相場には効果てきめんのようです。

一方で、日本は当初からワクチン接種の遅れが指摘され、足元でも苦戦を強いられています。英オックスフォード大などによる5月16日までの調査によると、日本で少なくとも1回の接種を受けた人の割合は約3%にとどまり、世界平均の約9%を下回っているとのことです。「ワクチン格差」が「景気・株価格差」につながる典型例といえるかもしれません。

しかし幸いなことに、これらの格差はある程度の時間さえかければ、十分に埋め合わせることが可能な問題でもあります。欧米では、ワクチンの供給体制が整い、余剰分は順次、日本のような不足する国へと向かう見込みです。政府は7月末までに高齢者向けの接種を完了させる目標を掲げていますが、身近に接種する人が増えてくれば、感染状況も株式市場の風景も随分と変わってくるはずです。

TOPIXの12ヶ月先予想PERは、2月に18倍台まで上昇した後、ほぼ一貫して低下し、足元ではおよそ16倍の水準にあります(5月24日時点)。株価は割安で、投資妙味ある水準まで調整が進んだと判断できます。「ワクチン相場」の到来に向けて、今のうちから出来る限りの準備を心掛けたいところです。

<文:チーフグローバルストラテジスト 壁谷洋和>

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