はじめに
自動車のトータル設計がEVでも強みになる
工業製品の結晶といえる自動車はトータル設計が重要であると考えている会社がデンソーです。2020年の販売台数は世界一となったトヨタグループの中核をなす自動車部品メーカーで、売上収益規模、技術力ともに世界有数です。多種多様な自動車部品を取り扱っていますが、近年ではHV用製品などの電動化対応製品、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術などを強化しています。
EVはバッテリーの容量で走行距離が変わります。モータを主たる動力源とするPHEVやEVにおいては、エンジンの動力で廃熱が得られなくなるため、空調稼働時には電動コンプレッサによる冷房や電気ヒータによる暖房など電気による冷暖房手段が必要となります。このため、電気エネルギー消費量が増大し、夏場にエアコン、冬場に暖房を使えばその分エネルギーをバッテリーから供給するため、走行距離は短くなります。バッテリーが熱を持つため冷却する必要が生じますが、車の総合的な設計ができれば、それらの熱を有効に利用できます。
また、デンソーが45%、アイシン(7259、東証1部)が45%、トヨタ自動車(7203、東証1部)が10%を出資するBluE Nexus(ブルーイーネクサス)という会社では電動化のためのモジュールの開発、適合、販売を行っています。アイシンのトランスアクスル、デンソーのインバーターは世界トップシェアを誇り、モータの開発においても両社がトップレベルの高い技術力を持っています。
さらに、車両目線でシステムアップできるトヨタが融合したことで、電動駆動モジュールから電動化システムまで幅広い品揃えを実現すると共に、技術コンサルティングや開発サポート、アフターサービスまで一貫したサービスを提供することで、世界中の顧客の要望にしっかりと応え、電動車の更なる発展を加速させ、普及に貢献していくとしています。
EVによって潜在的なニーズが顕著に
EV市場においては中国メーカーの存在も気になります。その特徴の1つはスピード感です。商談から製品の納入までが早く、この要求に応えるためにも生産能力を予め確保しておく必要がありそうです。また、製品として日本では不完全な形に見えても、市場にリリースされています。
米ゼネラル・モーターズ(GM)系の乗用車大手、上汽通用五菱汽車が作った小型EV「宏光ミニ」です。2020年7月に発売、価格は現地価格で2.88万元です。1元=17円計算で約49万円という格安の値段設定が話題になりました。値段が安い理由は性能に制限があるからです。全長290センチ、幅150センチのモデルで、約6時間充電すれば、約120キロメートルを走行できるそうです。
一番安いモデルは冷暖房機能がありません。必要に応じてオプションを付け、電池の容量を大きくしたり、冷暖房機能が付いたりします。安っぽく見えるかもしれませんが、本来車を買えなかった層や自宅周辺等での利用のニーズ、駐車場スペースも小さい等のメリットも多いのです。