はじめに
市場参加者が想定する米国の金融正常化スケジュールは?
では、来るべき金融の正常化に向けて、市場参加者が描く時間軸とは、具体的にどのようなものでしょうか。誤解を恐れずに推察すれば、次のようなスケジュール感が浮かび上がります。
(1)今後、数ヶ月間かけて、雇用の順調な回復を確認した上で、年末もしくは来年初あたりで、FRBによる資産買取規模の縮小(テーパリング)を決定。
(2)そして、来年の1~3月期のどこかで実際にテーパリングに着手し、2022年中にその作業を終わらせる。
(3)それから、景気回復の妨げにならぬよう、しばらく冷却期間をおき、2023年の後半(終盤)あたりで利上げを開始する。
株式市場の参加者の多くは、おおむねこうした時間軸をイメージしているのではないかと思われます。このスケジュール感が、早まるのは当然、株式相場にとって好ましくないですし、後ズレすることも歓迎されません。
なぜなら、金融緩和策の手仕舞いを急ピッチで進めることは、実体経済に悪影響を与えかねませんし、逆に後ズレすることは、それだけ景気の回復が緩慢であるという不都合な真実を突き付けるからです。「熱すぎず、冷たすぎず」の景気回復は、先に示した時間軸を狂わせることなく、堅調相場の原動力になると考えられます。
株式市場の参加者はこれまで金融緩和による恩恵を受けてきた時間が長かったせいもあり、金融引き締めへの転換、すなわち金利上昇に対しては、とかく神経質になりがちです。しかし、過去の金融引き締め局面を振り返ると、引き締め初期の段階では、同時に株価も上昇しているケースが多いことに気付きます。
それは、金融引き締めの裏側で起きている景気拡大の影響の方が勝り、差し引きで考えると株価にはプラスの影響が出やすいということなのでしょう。あくまでも金利上昇のペースにもよりますが、それが景気回復を妨げるものにならない限りは、金利と株価の上昇が両立することは十分にあり得ると思います。
<文:チーフグローバルストラテジスト 壁谷洋和>