はじめに
インドネシアの現状と先行き見通し
次に、インドネシアです。同国も含めてアジア新興国に共通しているのが、ワクチン接種スピードが遅いことと、効果に難があるワクチンの接種が目立つことです。そのなかで、7月3日からは、人口の多いジャワ島と観光地のバリ島で、緊急活動制限(PPKM)が発動されました。また、9月14日からは、スーパーマーケットに入場する際にワクチン接種証明を提示することが義務化されています。
直近発表された2021年4~6月期GDPは、前年同期比7.07%と、5四半期ぶりのプラス成長となりましたがまだ安心できるレベルではありません。7~9月期以降は、このたび発令されたスーパーへの入場制限やPPKMなどの影響によって、再度景気は減速に転じる可能性が高いとみています。
なお、年内には、米国でテーパリングが開始される見込みです。以前、2013年に米国がテーパリングを実施したときには、経常赤字で高インフレな国からの資本流出が目立ち、インドネシア・ルピアを含めた5通貨は、フラジャイル5(脆弱な5通貨)と揶揄され大幅な通貨安となりました。
直近ではコロナ対策実施などによってインドネシアのもともと不安定な財政状況が以前よりさらに悪化していることも通貨ルピアにとってマイナスです。今後、ポストコロナでインドネシアが本格的な景気回復を目指していくうえで、米国のテーパリングの行方、通貨ルピアの動きが注目されます。
ベトナムの現状と先行き見通し
最後に、ベトナムです。ベトナムは、これまでコロナ封じ込めに成功している国の一つとして世界から高く評価されていましたが、4、5月あたりから感染者が急増、景気悪化懸念が高まっています。
実際、直近発表された8月月次の経済指標をみると、輸出:前年同月比5.4%減、小売売上高:同4.7%減、鉱工業生産:同7.4%減、などいずれも減速が目立ちました。コロナの蔓延によって、企業の生産活動や国民の消費行動にまで悪影響が出始めていると思います。
ただ、中長期的にみれば、ベトナムを評価する前提条件が変わってしまったわけではありません。競合する周辺国は様々な問題を抱えており、投資を敬遠する理由の一つとなっています。
代表的なのが中国です。対米関係悪化が続いていることに加え、直近は国内でも唐突感のある規制実施などが目立ちます。また、同じく工場誘致などの点で競合するタイでは、現政権や王室への不満からデモが頻発するなど、国内の治安が悪化しています。これらの国と比較すると、ベトナムは政治が安定しており、他国からの投資を検討する際に、理由のひとつになっていると思われます。
今年2月には、ベトナムで共産党大会が開催され、主要指導部、今後の中長期目標などが定められました。この共産党大会において新指導部が固まったことで、ベトナムの政治がより強固で安定したものになっているといえます。今後、海外からの投資を武器に、自国経済の発展、工業国化を目指す、というこれまでの流れは続くとみています。
<文:市場情報部 明松真一郎>