はじめに

9月14日の日経平均株価は3万670円となり、1990年8月以来、31年1カ月ぶりの高値となりました。菅総理の自民党総裁選への立候補断念を受けて、次の新総裁、新内閣への期待が市場で高まったことが主要な理由と見られています。

なかでも、外国人投資家が新内閣の経済対策を期待して日本株の買い越し姿勢を強めたことが、相場上昇の原動力でした。今回は“株価の上昇”にとても重要な役割を担っている外国人投資家を取りあげます。


日本株を動かす外国人投資家

東京証券取引所では投資部門別の売買動向を公表しています。週次ベースの状況を見ると9月6日からの週は現物と先物を合わせて外国人投資家が2.1兆円と大幅に買い越しました。

“買い越し”というのは、外国人投資家が日本株を買うために使ったお金から、売ったことにより手元に入ってきた分のお金を差し引いた金額、つまり“売り”よりも“買い”がどの位多いかを見たものです。

2.1兆円の買い越しは昨年12月第3週の2.6兆円以来の水準となります。当時、バイデン米大統領が誕生して政治的な不透明要因が後退したなか、新型コロナワクチンの実用化の流れから世界経済の回復期待のなかで日本株の出遅れ感に注目した外国人投資家が、11月から12月にかけて大幅に日本株を買い越しました。この2カ月間で日経平均株価は4,467円と急上昇しましたが、牽引したのは外国人です。

このように株式相場が上昇する時には外国人投資家の“買い”がキーワードとなるケースが多く見られます。そこで実際に外国人投資家の買いと株価にどの程度の関係があるのか確認してみました。

外国人投資家が買えば上がり、売れば下がる?

東京証券取引所が月次ベースで公表している投資部門別の売買動向を使って、外国人の売買差額と日経平均株価の騰落率を比べてみます。

売買差額とは買い越しならプラス、反対に売り越しだとマイナスになります。ここでは外国人の売買のトレンドを見るために、過去6カ月間を累積しました。比較する日経平均株価も同じ期間(6カ月)の騰落率です。グラフを見ると連動していることが分かります。

少し山と谷の場面を細かく見てみましょう。2013年5月前後(図中の〇)は2013年の大幅買い越し場面です。当時の外国人投資家の買い越しの背景には2012年12月に始まった第2次安倍政権におけるアベノミクスへの期待がありました。大胆な金融政策にもよるデフレ脱却期待から外国人の買い越し姿勢が強まりました。

反対に、2015年6月から2016年末にかけて(図中の□)は大幅売り越し場面です。アベノミクス下で行われた異次元緩和にもかかわらずデフレ脱却が見えてこないことや、構造改革の進展が思ったほどでないことに失望した外国人が売り越しました。

このように見ると、外国人投資家は我が国の政策への期待が高まる場面で“買い越し”となり、逆に失望する場面で“売り越す”傾向があります。

アベノミクス前の外国人の大幅買い越しは、年間で9兆1,300億円買い越した2005年に遡ります。当時は小泉純一郎首相の郵政民営化に象徴される“聖域なき構造改革”に対する期待が背景にありました。そして外国人投資家の大幅買い越しが牽引役となり、2005年の日経平均株価は40%上昇しました。

このように“従前からの変革が期待されるほどの政策への期待”が特に外国人の買い越し姿勢を強めます。そして、外国人投資家の買いが牽引役となり相場が上昇する傾向が分かります。

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