はじめに
景気の鈍化を受けて、中国当局は各種政策の緩和姿勢を見せ始めています。過去の景気の悪化局面では、中国の経済政策に対して国内外のマーケットは大きな注目を寄せていました。公表された来年の経済政策方針を概観したうえで、来年の中国の経済政策に期待すべきか否かを考察します。
来年の中国経済政策は景気安定化を最重要視
米国、欧州を始めとした主要先進国が金融政策の正常化、利上げを模索し、新興国においてもインフレ対応から利上げを実施する国が増えています。その一方で、中国では金融市場への流動性供給や預金準備率の引き下げなど、金融緩和的と受け取れる措置が実施されています。果たして、来年の中国経済政策に期待しても良いのでしょうか。まずは、公表された来年の経済政策方針を概観します。
12月8~10日の日程で、中国の重要会議にあたる中央経済工作会議(以下、工作会議)が開催されました。同会議では、毎年、その年の景気や経済環境、課題を鑑み、翌年の全人代で可決する経済政策方針が議論されます。
その後、工作会議後に公表された声明では、来年は景気の安定化を最重要視することが強調されました。ただし、内容としては昨年の方針である「積極的な財政と穏健な金融政策」という大枠に変化はなく、景気の鈍化を認識しつつも、政策姿勢の明確な緩和への転換は確認できませんでした。
具体的な政策をみますと、財政政策については、事前に中央政治局会議で指摘されていた消費刺激策についての言及がほぼなく、例年通り減税と手数料の引き下げ、インフラ投資の適切な実施が示されたのみでした。こうした財政政策の実施に際しては、「地方政府の隠れ債務の発生を断固として阻止する」との文言が入り、地方政府の成長率重視の野放図な財政の実施をけん制するなど、緩和への慎重姿勢を示しました。
また、足元の景気鈍化の主因となっている不動産政策についても、「不動産は住むものであり、投機の対象ではない」という文言が再び使用され、当局が投資の抑制政策を継続する方針が示されました。
総じて見ますと、中国当局は来年の経済運営の安定化を目指し、これ以上の不動産政策の厳格化など景気の下押し圧力を強めるような政策の導入には慎重姿勢を示しているとみられます。その一方で、積極的な景気刺激を行う姿勢も示しておらず、来年の中国当局の経済政策は控えめなものに留まるだろうと筆者は考えています。