はじめに
イギリス、フランスが2040年までにガソリン車を禁止するという方針に続いて、中国政府も将来においてガソリン車を禁止する方針を表明しました。中国がガソリン車禁止に踏み込むのは、近年問題になっている中国各都市の大気汚染対策のためです。
すでに世界最大の自動車市場になっている中国でガソリン車が禁止されれば、地球温暖化の抑制にもつながり、なにより中国だけでなく世界の自動車市場が電気自動車時代に本格突入する可能性が出てきました。ではそのことで何が起きるのか、未来の自動車産業を予測してみましょう。
禁止となった背景に大気汚染問題
中国がガソリン車を禁止する方針を表明しました。時期についてはこれから検討するということですが、おそらくイギリスやフランスがガソリン車を禁止すると表明している2040年よりも早まることが予想されています。
その理由は、北京や重慶など中国の多くの大都市で大気汚染が深刻な社会問題になっているからです。
中国と同じく新興国で自動車台数の増加が問題になっているインドでは、2030年に国内でのガソリン車販売を禁止する方針ですから、おそらく中国もそれと近いか、さらに前倒しにした時期にガソリン車を禁止することになると考えられます。
中国の自動車販売台数はアメリカの1.6倍にあたる年間2800万台で、世界全体の自動車販売台数の約3割を占めます。この巨大市場がEV車(電気自動車)に向かえば、結果として世界全体の自動車市場もEVに向かうことは間違いないでしょう。では、その影響はどのようなところに出てくるのでしょうか。
世界最大の中国市場、EV化が加速
実は、今現在でも世界のEV市場の半分は中国で販売されています。これは中国政府がEV車に優遇制度を打ち出してきたことによる影響ですが、それでもEV車の販売台数は年間24万台と販売台数全体の1%未満にすぎません。
そのため4月に発表した新しい中国の中長期計画では、2020年にはプラグインハイブリッド車を加えたNEV車(新エネルギー車)の販売を年間700万台にまで増やすことを表明しています。これは、昨年の販売台数で計算すると、あと3年で中国市場の4分の1をNEV車にするという意欲的な計画でした。
この計画を耳にしたとき「達成は無理ではないか……」と思ったものですが、今回のガソリン車禁止のニュースで、状況は大きく変わりそうです。EV車の普及は、中長期計画以上のドライブがかかってくる可能性がでてきました。
実際にこの中国政府の発表を受け、現在モーターショーが開かれている欧州では、自動車メーカー各社が将来計画の見直しを次々と発表し始めています。
次々にEV化を発表する欧州メーカー
欧州メーカーのうち、スウェーデンのボルボは2019年に販売する自動車をすべてEV車に切り替えることを表明しています。イギリスのジャガー・ランドローバーは2020年にすべての自動車モデルでEV車を選べるようにする方針です。そして欧州最大手であるVW(フォルクスワーゲン)も、2025年までに全体で300種類ある車種すべてにおいてEV車ないしはハイブリッド車を揃えることを表明しました。
メディアのインタビューに応じたVWのミュラー社長は、2025年のEV車の販売目標を300万台とし、全体の4分の1を電気自動車にシフトする計画を明らかにしました。実はVWはまだ中国ではEV車を販売していないのですが、今回の中国政府の発表でその状況は大きく変化することになりそうです。
ドイツの大手であるダイムラーとBMWも同様にEV車強化の方針を表明し、一気に市場が動きそうになってきました。ところがその一方で、ドイツのメルケル首相はいちはやくこの状況に懸念を表明しました。
メルケル首相は何に対しての危機感を感じているのでしょうか。