はじめに

割り勘や年収——男女間で話題になるとなぜか険悪になる「お金」というテーマ。お金が絡むことで現れる男女の溝とは一体なんなのか? また、どうやってそれを乗り越えていけばいいのか? この人生における難問を、『生き抜くための恋愛相談』(イースト・プレス)を刊行して注目を集める恋バナ収集ユニット「桃山商事」の清田代表にぶつけてみました。


お金と恋愛が密接なのは……

お金が絡むと現れる男女の溝は一体なんなのか? 今回は “恋愛とお金の関係”について具体的に考えてみたいと思います。

——まずは清田さんご自身がお金について考え始めたきっかけを教えてください。

清田代表(以下同): 僕は読書と芝居鑑賞ぐらいしか趣味がないローコスト体質の人間なのですが、浪費もしない代わりに計画性もなくて、お金のことを真剣に考え始めたのが、実はつい数年前の話でして……。そんな自分がこの場で偉そうに語っていいのか、甚だ不安ではあります(笑)。

——どんな転機があったのでしょうか。

大きな失恋や会社からの独立など、20代後半から30代前半にかけていっきにいろんな出来事がありまして、それでお金のことを真剣に考えるようになりました。

僕は以前、大学時代のサークル仲間と会社を立ち上げ、雑誌やウェブ媒体の制作を請け負う仕事をやっていたのですが、30代に差しかかったあたりから、働き方やお金の問題に関して社内で意見が割れるようになってしまいまして……。

当時は「自分たちの作品で勝負していきたい」と「稼げる仕事を増やして会社を発展させたい」というふたつの意見があり、自分は前者だったんですが、そのためには受注仕事を減らして作品づくりに費やす時間を増やさねばならず……そうなると今度は給料を減らす必要が生じ、そこに反発する声が大きかった。でも僕は、せっかくサークルをそのまま会社にしたんだから、お金よりも夢だろう!と考えていて。今考えるとホント青臭い話なんですが(笑)。

出版社や広告代理店でバリバリ稼いでいる同級生たちを見て、「お金って何なんだろう」と考えさせられた経験も大きかったです。

というのも、彼らは忙しすぎてみんな疲れ切っていて、30歳にしてすでに年収800万とか1000万とかもらっているのに、すぐタクシーに乗る、しょっちゅうマッサージに行く、寿司や焼き肉でストレス発散……と、心身のメンテナンスでお金を使い果たしているような状態でした。

その様子を見ていて、お金を稼いだところで楽しい暮らしができなきゃイヤだなって考えるようになった(自分は絶対お金持ちにはなれないな、とも……)。それで結局、32歳のときに会社を辞め、もうひとつのサークル活動として続けていた桃山商事に軸足を移しました。

収入が不安定だから…という理由で大失恋

——お金を増やすことに真剣になったわけではなく、お金とどういうふうに付き合えば幸せなのかを考えるようになった、ということでしょうか。

そうですね。まず、「自分にとってどんな生活が幸せなのか」というイメージをもつことが大切だと思いました。それがないと、それを実現させるためにはどのぐらいのお金と時間が必要で、そのためにはどんな働き方・稼ぎ方を選択すればいいのかがわからないと思うんですよ。

こういうことを考えるようになったもうひとつのきっかけが、31歳のときの失恋体験です。その頃、6年半付き合った同い年の彼女と結婚をめぐるすれ違いによって別れてしまうという出来事がありまして……。それまで、彼女との結婚は「仕事が安定したら」ぐらいにふわっと考えていたのですが、具体的なプランは何も決めていませんでした。

そこで、しびれを切らした彼女と親戚一同から呼び出されて、「結婚するならちゃんとした会社に就職してほしい。それが無理なら厳しい」と言われてしまった。彼女とは別れたくなかったので、真剣に就職を考えたりもしたんですが、やりたい仕事を辞めるという決断ができず、モタモタしてるうちにフラれてしまい……。

その時は、「安定した企業に就職しないと結婚させないって何様だよ」って納得がいかない気持ちも多々ありましたが、今考えれば、彼女が求めていたのはいい稼ぎとかではなく、妊娠のリミットを考慮したうえで、安定した基盤の上に将来を築いていくことだったのではないかと思います。

けれど当時の僕にとっては、お金や安定よりも時間のほうが圧倒的に大切で、結局はその価値観のズレを埋められなかったということなのだと思います。要するにいわゆる「結婚を決断できない彼氏」ってことなんですが……お金はその人の価値観と直結してるものなんだなと、改めて認識した出来事でした。

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