はじめに
一時期は減少傾向にあった株主優待が再び増加してきている気配です。株主に製品やサービスを贈る優待制度ですが、野村インベスター・リレーションズ(IR)によれば、2023年1〜11月に制度を新設・拡充したのは161社に上り11月末時点で前年を4%上回り、4年ぶりの高水準となったそうです。161社のうち株主優待を新設(再開を含む)したのは72社、拡充したのは89社。161社の個人株主の保有株の割合は単純平均で51%とのことです。一方、2022年、個人株主に人気のJT、オリックス、マルハニチロが次々と株主優待の廃止を決定しました。多くの企業がそれに続いた印象で、2023年1〜11月に優待制度を廃止・縮小した企業は110社(上場廃止による優待廃止を含む)あったそうです。
市場再編と新NISAが影響か
2022年4月から開始した東証による市場再編に伴い、プライム市場では上場基準に株主数の規定を2,200人から800人に緩和した事で、企業にとって個人株主の必要性が弱まりました。しかし今年1月から新NISAの開始があり、個人投資家が増加するであろうことを背景に、優待を新設・拡充する企業が増えてきていたようです。新NISA導入にあたり、株主優待が増加している背景を考えると、企業側は個人投資家を強く意識し、自社の株価上昇、安定的な株主を得たい思惑があると感じます。
前述の野村インベスター・リレーションズ(IR)によると、株主優待を新設・拡充(再開含む)したのは、業種別ではサービス業が65社と最も多いのですが、コロナ禍では控えられていた接客や販売などが、昨年あたりから少しずつ復活し、株主を一顧客であると認識している企業が増加しているようにも思えます。また株主還元の手段として増配や自社株買いを行う方が海外投資家を含め多くの投資家に対して「平等性の原則」を表しやすいと考える企業は次々に優待制度を廃止しました。
廃止は7社、新設は5社
今年に入り株主優待を廃止した企業は7社、新設した企業は5社です。拡充も約同数となっています(1月31日時点)。昨年寄稿した記事内で、株主優待の新設や拡充、それに反する廃止の流れは今後しばらくは二極化しつつも、日本特有の贈り物文化を感じさせる優待制度は簡単には無くならない、と書かせていただきました。今のところ、概ねそのような流れになっているようです。今後はどのようなになっていくのか、また追って経過状況をお伝えしたいと思います。
続いて、今年株主優待を新設した5社を紹介します。