はじめに

東京-札幌などの空路をつなぐ航空会社「AIRDO」が、2018年2月の大幅な運休を発表しました。理由はパイロットが確保できないためです。

このパイロット不足は「2030年問題」と呼ばれ、今後ますます深刻になるといわれています。日本の空は大丈夫なのでしょうか?

安い空の旅は続けられるのか――。状況をまとめてみました。


AIRDO大量運休の影に乗員問題

11月16日、AIRDOは2018年2月の計26便を運休すると発表しました。10月末には11月運航予定だった34便の運休が告知され、問題になったばかりでの新しい大量運休です。

原因は8月と10月に機長が相次いで退職したこと。結果、乗員のやりくりがつかなくなったというのです。

本当は副操縦士が昇格できるとよいのでしょうが、実はこれにはとても時間がかかります。規程の機乗経験時間を積まないと機長にはなれません。

そうなると外国人機長を雇うしかないわけですが、これがまた人材不足。つまりパイロット不足は日本だけでなく世界の問題なのです。

乗員不足にはふたつの要因があります。

ひとつは1990年代から2000年代の規制緩和によって航空会社の経営が厳しくなった際に、世界的にパイロットの雇用が抑制されたこと。もうひとつは、中国やインドなど新興国が成長し、主にアジアでの航空需要が増えたことです。

これらの現象には皮肉なタイムラグがあります。説明しましょう。

安く航空機に乗れるようになった結果

航空会社はIATA(国際航空運送協会)という組織の下で、長らく合法なカルテルが国際的に認められていました。

主に1990年頃までの話ですが、航空運賃はとても高く、その設定された運賃によって安定した航空会社の経営が行われていました。

ところがジャンボジェット機が登場して以降、この料金体系が崩れ始めます。機体が大きいため、正規料金以外の乗客も確保しないと座席が埋まらないのです。

そのため、団体用の航空券をバラ売りし、個人旅行客に販売することが黙認されるようになりました。これが格安航空券の始まりです。

1990年代になると、航空会社を守ってきた、さまざまな規制がアメリカを中心に緩和されるようになりました。規制を実体に合わせるためです。

アメリカで導入されたマイレージも、当初は「航空会社の収入を減らす」と日本では導入を見合わせてきたのですが、それでは米国系の航空会社に勝てないということで押し切られます。

こうして「航空料金は高い」というそれまでのイメージがなくなり、誰もが安く利用できるようになりました。しかし、その結果、航空会社の収益性は下がります。そして、日本、そして世界的にパイロット採用が抑制される流れができたのです。

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