はじめに
日常生活や生き方を通して、お金の価値観・人生観を考えるきっかけになるような話題の本をMONEY PLUS編集部がピックアップ。書籍の担当編集者に読みどころやこだわり、制作秘話などを語っていただきます。
今回は、デイヴィッド・J・ハンド著、松井信彦訳の『「偶然」の統計学』をご紹介します。
『「偶然」の統計学』デイヴィッド・J・ハンド著、松井信彦訳
2回連続、当選番号が同じになったロト。10万年に一度のはずが何度も起きる株価大暴落。“ありえない出来事”が続くのは、奇跡や偶然ではなく、5つの法則からなる「ありえなさの原理」が関係しているとして、統計学者が身近な具体例を挙げてその原理を解き明かす。
四六判/並製/348ページ/早川書房/2017年10月5日
担当編集者のコメント
「十数年前になくした結婚指輪が、収穫した人参にはまった状態で見つかった」というニュースが先ごろ話題になりました。そんな奇跡のようなことが……と驚いた方も多いと思います。しかし、もっと驚く事実が。なんと、本書『「偶然」の統計学』にも、まったく同じ過去の事例が紹介されているのです。
著者のデイヴィッド・J・ハンドは、ウィントン・キャピタル・マネジメント社の首席科学アドバイザーも務めるイギリスの統計学者。「ロトで2回連続同一当選番号」「生涯で7回落雷にあった人物の墓石に落雷」「10万年に一度のはずの株価大暴落」など、一見ありえないような出来事が現実に頻繁に起きていること、そしてそれらがなぜ私たちの目には奇跡のように映るのかを、統計学的に証明していきます。
「統計学」といっても、難しい理論や数式が出てくるわけではありません。前述のような出来事が起こる確率の簡単な計算や、ロトですべての組み合わせを買おうと試みた(当選確率100%!)人々の顛末など、数々の具体例を挙げながら、5つの法則からなる「ありえなさの原理」を解説します。
株取引や保険の仕組みなど、お金にまつわる事柄の多くが確率・統計で成り立っています。「奇跡」や「偶然」のトリックに惑わされないためには、この「ありえなさの原理」を理解し、統計リテラシーを高めることがビジネスパーソンにとっても重要であることを、改めて認識させられる1冊です。
最後に、ロトの当選確率を変えることはできませんが、当たった際の受け取り額を高める数字の選び方は存在することも、本書はそっと教えてくれます。
(早川書房 担当編集:金田)