はじめに

12月1日、米領グアムの首都ハガニアのスペイン広場に、日本から招待された旅行業界関係者やメディアなど、約400人が詰めかけました。催されたのは、日本とグアムの観光交流50周年を記念した歓迎レセプションです。

そこにサプライズゲストとして現れたのは、色鮮やかなドレスをまとったAKB48グループの6人のメンバー(AKB48の入山杏奈さん、SKE48の古畑奈和さん、NMB48の山本彩さん、太田夢莉さん、HKT48の朝長美桜さん、NGT48の荻野由佳さん)。

なぜ彼女たちが、このイベントにサプライズゲストとして登場したのでしょうか。現地の関係者を取材すると、日本で伝えられている情報とは異なる、グアムの現状が見えてきました。


「インスタグアマー」って何?

インスタグラマーではなく、インスタグ“ア”マー。写真・動画共有SNS「インスタグラム」で大きな影響力を持つユーザーを「インスタグラマー」と呼びますが、この日、AKBグループの6人の就任が発表されたのは「公式インスタグアマー」という役職。インスタグラムでグアムをPRするグアム政府観光局の2018年度キャンペーン「#InstaGuam(インスタグアム)」の推進役を務めます。

AKB48の入山杏奈さんは、同日に発表された「新語・流行語大賞」に触れて、「(大賞に選ばれた)まさに“インスタ映え”のスポットをみんなで巡ったので、私たちの撮った写真や映像でグアムの良いところ、素敵なところを伝えられたらと思います」と意気込みを語りました。

彼女たちを起用した理由は、AKBグループが『Everyday、カチューシャ』をはじめ、数多くのミュージックビデオをグアムで撮影していたため。今後、彼女たちは自身の公式インスタアカウントから、グアムの魅力を「#instaguam2018akb」 をつけて投稿していくそうです。

このレセプションに登場したのはAKBグループの6人だけではありません。2008年からグアム観光親善大使を務める、俳優の舘ひろしさんも登壇しました。その登壇の瞬間、舘さんの姿をスマートフォンで撮影しようと、華やかな装いの若い女性たちが歓声を上げながらステージ前に駆け寄りました。

実は、彼女たちも日本から招待された関係者。職業はモデルや会社員、ヨガインストラクターとさまざまですが、万単位のフォロワーを有するインスタグラマーとしての顔も持っています。彼女たち61人も「認定インスタグアマー」として、AKBグループメンバーと同様にPR活動にかかわります。


「ハンブロス」の前で撮影したインスタグラマーの投稿

グアムには、日本やハワイにはない、かわいいアパレルブランドやおいしいレストランがたくさんあります。情報感度の高い彼女たちは、グアム到着後、すぐにハンバーガーショップの「ハンブロス」やアパレルの「ハファロハ」から、インスタ映えする写真を次々とアップしていました。

インスタグアマーが必要だった理由

それにしても、なぜグアム政府はアイドルや大勢のインスタグラマーを招待して、キャンペーンに起用したのでしょうか。そこには、こんな背景がありました。

今年8月、北朝鮮がグアム周辺へのミサイル発射計画を表明して以降、グアムを訪れる日本人観光客が激減しました。観光客全体では高水準を維持してきましたが、日本人だけが大きく数を減らしたのです。

「テレビなどで『島民がパニック』『島民が買い占め』といった報道が多数ありましたが、グアムで島民がパニックになったことなど一度もなく、変わらず平和な日々が営まれています。島民からは『日本人に買い占めする演技をしてほしい』と頼まれたという複数の証言も寄せられています」

こう憤るのは、グアム政府観光局広報担当の北川淳子さん。日本人観光客が激減した理由は、北朝鮮のミサイル発射計画そのものというより、その後の日本メディアによる“歪曲報道”であり、その“風評被害”だと見ています。

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