はじめに

何がどう“歪曲”されたのか

グアムの島民は大家族が多く、車社会でもあるので、一度に買い物する量が多いといいます。ところが日本のテレビでは、スーパーに車で乗りつけて大量に買い物をする様子を「戦争の勃発に備えて物資の買い占めをする映像」として流されました。

また、カトリック信者が多く、彼らが日曜日に教会のミサに行く姿をとらえて「恐怖心から神に祈っている様子」として報じられたそうです。台風に備えて普段からガソリンを満タンに入れている姿も、同様に「北朝鮮のミサイルでパニック状態の島民」というメディアのステレオタイプに合わせた報道がなされたといいます。

このように、事実を歪曲して報道したのは日本のメディアくらい。米CNNや英BBC、中東のアルジャジーラなどは、グアムの日常に変化はなく、平和であることを確認し、グアム政府による安全宣言に比重を置いた内容だったそうです。


ミサイル騒動後もグアム島は平穏を維持しているもよう

「グアム政府が米軍から入手した、グアムにミサイルが着弾する確率は0.000001%で、可能性はほぼないと断言できるでしょう。10月から12月末までに7つの修学旅行の予約も入っていますが、そうしたことを説明しても報道からカットされてしまう。日本の皆様には、報道機関のみならず、日本やグアムの各政府機関が発信している情報にも目を向けていただきたいと思います」(北川さん)

こうしたネガティブな報道による風評を払拭し、平穏であるという事実と観光地としてのポジティブなイメージを拡散するのに打ってつけな存在が、アイドルや有名インスタグラマーたち、というわけです。

JAL増便の“露払い役”として期待

フォロワー数73万人を誇る山本彩さんが12月5日にグアムの砂浜で撮った写真をインスタグラムに掲載したところ、「いいね」が7.7万件もつけられ、その影響力の大きさを見せつけました。その他のAKBグループのメンバーやインスタグラマーの写真にも数千件の「いいね」がついています。滑り出しは上々のようです。

さらなる朗報もありました。レセプションに来賓として招かれた日本航空(JAL)の長田博文グアム支店長が「2018年3月25日から、グアム便を成田から1日に2便飛ばします」と発表すると、会場は大きな拍手に沸きました。


レセプション会場の様子もインスタグラムに投稿

今回のJALの増便は、約7ヵ月間の試験運航です。それでも、米デルタ航空の日本―グアム路線からの完全撤退、米ユナイテッド航空の減便と逆風が強まる一方だった状況下、グアムにとって追い風となることは間違いありません。

「(山本彩さんのインスタグラムへの反応は)予想以上の効果で、われわれも大変うれしく思っています。グアム政府の中でも、彼女たちがこの逆境を覆してくれるという期待は大きいです」と北川さんは力を込めます。インスタグアマーたちがネガティブな風評を吹き飛ばし、新たな風を呼び込めるでしょうか。

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