はじめに
2025年も1月半が経ちました。年が明けてからあっという間だったように思えます。マーケットを取り巻く環境もあわただしく変化してきました。なんといってもトランプ氏が米国の大統領に再び就任したことが大きな出来事です。大統領就任からまだ1ヶ月も経っていませんが、トランプ氏は矢継ぎ早に政策を打ち出し、世界経済とマーケットを動揺させています。
グローバル経済の鈍化の懸念
金融政策の面でも変化がありました。まずアメリカです。1月のFOMC(米連邦公開市場委員会)でFRB(米連邦準備制度理事会)は現状の政策金利の据え置きを決定し、利下げを見送りました。FRBは、2024年9月のFOMC以降、3会合連続で合計1.0%ポイントの利下げを実施してきましたが、これをもってアメリカは利下げ停止局面に入ったと捉えられます。一方、日本では日銀が1月の金融政策決定会合で政策金利の引き上げを決定しました。今後さらに追加利上げし金融政策の正常化を目指すと見られています。
企業業績についても2024年10-12月期の決算発表が日米ともに一巡し、直近の状況が明らかになっています。これらのことから、少なくとも年度末までの相場動向を占う材料はテーブルの上に並べられたといえます。
それではこれらの材料をひとつひとつ吟味していきましょう。まずトランプ政権による関税の影響です。トランプ氏は大統領選期間中、中国に60%の関税を課し、それ以外の国・地域には10~20%の一律関税を課すと発言していました。ところが政権発足後はカナダ、メキシコに25%、中国に10%の追加関税を課すと表明したものの、メキシコとカナダに対する関税の発動自体は1ヶ月延期するなど、二転三転しています。そうしたなか、最近では米国が輸入する鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を課すと発表しました。貿易相手国が米国製品にかけている関税を米側も同じように課す「相互関税」の導入にも言及しています。これまでのところ、トランプ政権の関税政策の全容はまったく予想ができません。
しかし、政権発足から1ヶ月足らずでこれだけ関税に関する政策を掲げる以上、米国が一段と保護主義に向かうのは確実です。IMF(国際通貨基金)は「貿易政策の不確実性が急速に高まっている」として世界貿易量の伸び率見通しを下方修正しました。2025年は2024年10月時点の予測よりも0.2ポイント、2026年は0.1ポイント引き下げたのですが、その程度で済むかどうかはわかりません。問題は貿易量だけでなく、国境をまたぐ資金の移動、すなわち幅広い分野での国際的な投資が停滞する可能性があることです。貿易や投資の低迷はグローバル経済の鈍化に直結する悪材料です。