はじめに

不確実性の高まる市場環境では、配当と株主優待を組み合わせた「総合利回り」が安定収入と成長性を両立する戦略として有効です。本記事では、企業の業績や財務の見極め方、高利回り銘柄の注意点、優待新設や廃止の動きまで、長期的な投資判断に役立つ視点を解説します。


安定収入へのニーズの高まり

市場のボラティリティが高まり、政治・経済の不確実性が増す中、安定的なインカムゲイン(配当などの収益)を求める投資家が増えているように感じます。

特に日本市場では、特有の文化ともいえる株主優待制度を主目的とした投資をされている方も多く見られます。株主優待は、配当とは別に自社製品やサービス券などを贈ることで株主との接点を強化する制度であり、実質的な利回りを高める役割を担っています。急落時に高利回りの銘柄を狙う戦略も一定の有効性がありますが、不確実性の高い環境では、利回りとともに将来的な資本成長の両方を求める戦略がよいのではないでしょうか。

今回は、そのようなニーズを満たす方法の一つである、配当と株主優待を活用した「総合利回り」に注目。短期的な業績トレンドと長期的なビジネスモデルの持続性を同時に評価することで、攻守を両立する投資戦略についてお伝えします。

総合利回りとは? 配当+優待で見る実質利回り

まず、「総合利回り」とは何を意味するのかというと、配当利回り(1株あたりの年間配当金÷株価×100)に加え、優待利回り(株主優待の価値を金額換算して年換算した額÷投資額×100)を合算した利回りのことです。

例えば、ソフトバンク(9434)は株価が218.7円(2025年5月20日時点)で、1株配当は1株あたり8.6円(予想)であるため、配当利回りは、(8.6 ÷ 218.7) × 100 = 約3.93% となります。

株主優待については、「継続保有1年以上」という条件付きで100株の保有に対して1,000円相当のPayPayマネーライトが受け取れます。投資額は、218.7円 × 100株で21,870円ですので、優待利回りは(1,000 ÷ 21,870) × 100 = 約4.57% となります。
この2つを合算すると、ソフトバンクの総合利回りは約8.5%です。

配当にはキャッシュフローの安定性や経営者の株主還元姿勢が表れます。一方、優待には企業のブランディングや株主との関係構築への意志が込められており、個人投資家にとっては心理的満足度も高いといえます。

この2つを組み合わせて評価することで、「利回りだけでなく、企業との関係性までも含めたリターン評価」が可能になる点が総合利回りの魅力です。

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