はじめに

政府の掲げる訪日客数や消費額の目標も追い風となり、インバウンド再拡大へ。多面的な投資チャンスが広がる今、買い物・体験・多言語対応・地方観光などの戦略視点から、どんな企業が恩恵を受けるのかを探ります。ETFの選び方にも触れ、今注目したいインバウンド関連銘柄の見極め方を解説します。


インバウンド需要の再拡大と日本経済の構造変化

インバウンドという言葉は2015年に流行語大賞にノミネートされてから一般的になり、今は日常でも使われるワードとなりました。もともとは「内向きの」という意味ですが、日本では訪日外国人観光客を指す言葉として定着しています。明治時代に渋沢栄一が国際観光の有益性に着目し、訪日外国人をもてなす「喜賓会」を設立したことが日本で最初のインバウンドだといわれています。

2003年に政府が観光立国を宣言し、2023年3月に策定された観光立国推進基本計画(第4次)では、「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」という3つの柱が示され、「2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人、消費額15兆円を達成する」という政府目標が掲げられているところです。つまりインバウンドは“政策に売りなし”といわれる政策関連であります。

最新統計から見る動向──訪日客数は過去最高に

直近では2025年5月21日に日本政府観光局が発表した訪日外客数(2025年4月推計値)は 3,908,900 人。前年同月比では 28.5%増で過去最高であった 2025年1月の 3,781,629 人を上回り単月過去最高を記録。単月として初めて 390 万人を突破しました。コロナが明けて2024年以降にインバウンドの急回復が見られる中、日本の人口減少と高齢化が進行しており、訪日外国人による「外貨流入」が国内消費を再び活性化させるエンジンのひとつになっています。インバウンド関連銘柄はまだまだ注目する余地があります。

注目のインバウンド関連銘柄と5つの戦略視点

インバウンド関連銘柄は数多くありますが、すべてが恩恵を受けるわけではありません。モノ消費(買い物中心)からコト消費(体験型・高付加価値型)へと消費スタイルが変化しており、以下の5つの視点で絞り込むことが重要です。

1. 消費を直接取り込む “王道インバウンド銘柄”

まず、訪日外国人の消費動向を取り込む企業が挙げられます。飲食、宿泊、小売、交通など、外国人観光客が必ず利用するインフラや、お土産の購入などによって直接的な恩恵を受ける業種が該当します。百貨店や家電量販店、観光地のホテルチェーン、空港周辺の飲食店などです。

2015年に「爆買い」が流行語となる以前から、インバウンド関連は株式市場でも注目されてきましたが、当時からの注目銘柄はこの視点にあたるものが多い印象です。都心の銀座・新宿といった立地優位性があり富裕層外国人からの支持も厚い三越伊勢丹(3099)、テナント収入や商業収入の増加が見込まれる日本空港ビルデング(9706)、家電量販店のビックカメラ(3048)やヤマダホールディングス(9831)など、いわゆる“王道インバウンド銘柄”は今なお注目できると思います。

また、ルタオなど地方銘菓の人気ブランドを多く展開する寿スピリッツ(2222)は、株価が10倍となるテンバガーを達成しており、今後も引き続き成長が期待される企業の一つです。

2. 観光需要拡大を支えるインフラ・周辺産業

次に、訪日需要の広がりを間接的に取り込む企業も視野に入ります。鉄道会社や空港運営会社、観光地向けに業務用製品を提供する企業などが該当します。これらの企業は、訪日外国人の消費そのものではなく、観光需要の拡大によって間接的に受注や収益が拡大していく構造です。

1つ目の視点で挙げた企業と関連性の高い業種から連想して掘り下げてみるのも良いかもしれません。

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