はじめに

ひとり暮らしの高齢者が増えています。「ひとり暮らしの高齢者が抱える問題」は、決して他人事ではありません。あなた自身の問題にもなり得ます。

たとえ今は夫婦二人暮らしであっても、いつかは配偶者が亡くなって、どちらか一人になってしまうでしょう。子どもがいる場合でも、長い老後生活の中で疎遠になってしまうこともあります。これは自分の親の問題であると同時に、自分自身にもいずれ起こりうる問題です。

ひとり暮らしで問題が出てくるのは、要介護になったときだけだと思っていませんか? もちろんひとり暮らしの介護は、とても大きな問題です。しかし、要介護にならずとも日常生活においてさまざまな問題が出てくるのです。


日常生活で困ることがいっぱい?

日常生活で困るのは、どんなときか、想像してみてください。まず、高齢になって身体機能が落ちてきたときに困るのが、食料品の買い物です。農林水産政策研究所の「食料品アクセスマップ」によると、食料品の買い物が困難な高齢者は2020年時点で904万人います。75歳以上に限ると、約566万人で高齢者全体の約3人に1人が該当します。

そのほかにも、日常生活にはちょっとした「困ったこと」が積み重なります。たとえば、ゴミ出し、風呂の掃除、電球の交換などです。ペットを飼っている場合は、その世話が負担になることもあります。これらのことができなくなると、少しずつ生活の質が下がってきます。

ペットは大事な家族の一員だと思いますが、ペットの世話は残念ながら介護保険の適用範囲外です。ですから、たとえ要支援・要介護に認定されていて、ヘルパーさんの介護を受けているケースでも、ヘルパーさんにペットの世話をしてもらうことはできません。

蛍光灯や電球の交換なども、高齢者にとっては難しいものです。しかし、これも介護保険の対象外で、ヘルパーさんが交換することはできません(一部の自治体では認められていることもあります)。

自分だけでは解決できないトラブル

その他にも、大きなトラブルが起こったときには、自分で解決することが難しい場合もあります。たとえば、病気やケガで入院したときです。

入院の手続きには、身元保証人を求められることが多いです。また、緊急で入院が決まった場合は、パジャマ、スリッパ、下着などを自分で用意するのが難しいこともあります。さらに手術のときには、同意書を求められるほか、高額療養費の申請が必要となる場合もあります。

退院にも手続きが必要ですし、自宅に戻ってからの日常生活のサポートも必要です。多くの場合、退院してから日常生活を送ることは、入院前よりも大変になることが多く、日常生活を再構築する必要が生じます。

高齢で入院する場合は、終末期の医療についても自分の意向を示しておくことも重要です。認知症になったときのサポート体制も、事前に考えておく必要があります。

そして、亡くなった場合も、それで終わりではありません。埋葬、相続財産の問題、入院費の支払いなどの「死後事務」が残されます。そのため、亡くなった後の手続きについても、自分の意向を明確にしておくことが求められます。

このように、ひとり暮らしの高齢者が完全にひとりで生きるのは、なかなか難しいものがあります。では、公共サービスや民間のサービスでサポートを受けることはできるのでしょうか?

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