はじめに
「月々1万円台で新車に乗れる」「頭金なし・ボーナス払いなしでOK」そんな広告を見かけたことがある方も多いのではないでしょうか?
このような支払いを可能にしているのが「残価設定型クレジット(通称:残クレ)」と呼ばれる仕組みです。初期費用を抑えながら新車に乗れるという手軽さから、残価設定型クレジットは車の購入方法として広く利用されるようになっています。
しかし車の購入は、日常生活における大きな支出のひとつであるため、「月々の支払いの安さ」だけに目を向けるのではなく、仕組みや注意点を理解し、自分のライフスタイルや家計に合っているかどうかを慎重に見極めることが大切です。
今回はFPの視点から、残価設定型クレジットの基本的な仕組み、注意点、そして他の購入方法との違いについて解説していきます。
残価設定型クレジットの仕組みとは
残価設定型クレジットは、将来の下取り価格(残価)をあらかじめ差し引いた金額でローンを組む方法です。
例)
・購入価格:300万円
・残価(3年後の下取り想定額):140万円
・支払い対象:160万円(+利息・手数料)
つまり、車の全額ではなく支払い対象の一部である160万円を分割して支払うため、月々の返済額がグッと抑えられるわけです。契約期間終了後には、次のような選択肢が用意されています。
→ 残価を一括または再ローンで支払えば、そのまま車を自分のものとして乗り続けることができます。
②車を返却し、新たに別の車に乗り換える
→ 現在の車を返却し、ディーラーに下取りのような形で引き渡したうえで、新しい車に乗り換える方法です。この場合、残価の支払いは不要ですが、次の車との新たな支払契約が必要になります。
③車を返却して契約を終了する
→ 車を返却し、次の車の契約を行わずに終了する方法です。車の状態や走行距離が契約条件を満たしていれば、追加費用は発生しません。
上記3つから選択し、残価を消化することになります。
残クレの注意点
残クレは「月々の支払いが安くなる」「数年ごとに新しい車に乗れる」といったメリットがある反面、注意点もあります。そのポイントを見ていきましょう。
①総支払額が高くなる可能性がある
残クレは“月々の支払いが安い”分、金利が高めに設定されていることが多く、最終的な総支払額は通常ローンより高くなる傾向にあります。さらに「残価にも金利がかかる」ケースもあり、見えにくいコストが積み重なっていきます。
②車の使い方に制限がある
契約時に「年間1万kmまで」などといった走行距離の上限が設定されることが多く、これを超えると返却時に超過料金が発生します。また、傷や汚れについても基準があるため、小さなお子さんがいる家庭や、ペットを同乗させたい方、日常的に車を使う方は注意が必要です。
③返却時に追加費用が発生する可能性がある
契約満了時に車を返却する場合、車の状態や走行距離によっては、事前に設定された残価よりも価値が下がっていると判断され、差額の支払いが必要になることもあります。査定基準をあらかじめよく確認しておきましょう。
④長く同じ車に乗りたい人には向いていない
「10年は乗り続けたい」「整備しながら大切に乗りたい」という方にとっては、残クレは不向きです。契約終了後に残価を支払って買い取ることも可能ですが、通常ローンや一括購入と比べると利息や総コストの面で割高になる傾向があります。