はじめに

2025年6月13日に成立した年金制度改正法の改正内容のひとつに「在職老齢年金の見直し」があります。これによって、もらえる年金額がこれまでより増える人がいます。年金は老後の収入の柱となるお金ですから、増えるのは嬉しいですよね。

今回は、年金制度改正法の改正内容のひとつ、在職老齢年金の見直しについて紹介します。


そもそも在職老齢年金って?

在職老齢年金は、60歳以降の働く高齢者の給与と年金の合計が一定額を超えた場合に、年金の一部(または全部)が支給停止となる制度です。

本来、年金は納めた保険料に応じてお金がもらえる制度。たくさん保険料を納めれば、その分年金もたくさんもらえるのが原則です。ただ、日本は少子高齢化が進んでおり、高齢者を支える現役世代の負担が重くなっています。そこで、60歳以降で老齢厚生年金をもらいながら働き、給与+老齢厚生年金の金額が一定額を超えるような人には、年金を支える側に回ってもらおうということで、在職老齢年金として年金の一部または全部が支給停止になるのです。

在職老齢年金のイメージ

厚生労働省のウェブサイトより

上図は、2024年度の基準で作成されています。2024年度の場合、給与+年金が50万円を超えた場合、50万円を超えた額の2分の1にあたる年金額が支給停止になります。給与(厳密にはボーナス含む年収の12分の1)が月45万円、厚生年金が月10万円の人の場合、給与+年金は55万円です。したがって、厚生年金は50万円の超過分、5万円の2分の1にあたる2万5000円分が支給停止になります。なお、在職老齢年金で支給停止の対象になるのは老齢厚生年金のみ。老齢基礎年金は減額されません。

2025年度は在職老齢年金の基準となる「50万円」が「51万円」に引き上げられましたが、計算のしかたは同じです。同じく給与45万円・厚生年金10万円の人の場合、(45万円+10万円−51万円)×1/2=2万円ですから、厚生年金が2万円支給停止になります。

そして2026年度からは、在職老齢年金の適用の基準が2024年度の「50万円」から「62万円」に引き上げられます。

在職老齢年金の見直しのイメージ

厚生労働省のウェブサイトより

給与45万円・厚生年金10万円の人の場合、62万円に届きませんので、在職老齢年金の対象になりません。つまり、厚生年金が減ることなく全額受け取れるようになるのです。在職老齢年金の対象にならなくなれば、単純にもらえる厚生年金の金額が増えますし、減額を気にせず働けるわけです。

在職老齢年金で支給停止となる部分は、厚生年金の繰り下げ受給をしたとしても増えないしくみになっています。「在職老齢年金で減額(支給停止)されるなら、むしろ老齢厚生年金の繰り下げ受給で金額を増やそう」と考える人がいるかもしれませんが、そうはできないのです。

しかし、今回の在職老齢年金の改正によって支給停止になる年金額がなくなったり減ったりすれば、その分繰り下げ受給で増やせる年金額も増えます。

なお、在職老齢年金の基準になる金額は、毎年度の賃金変動によって決められます。「62万円」はあくまで2024年度の金額をもとに計算されたものです。2026年度の金額は2025年度の賃金変動によって決められるため、「63万円」「64万円」などと増える可能性があります。

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