はじめに
6月13日に成立した年金制度改正において、iDeCoの加入が70歳まで継続できることが決定しました。長く加入できることは良いことですが、「資金の使い方」を見据えた運用も重要です。今回は60歳以降のiDeCoの活用を考えてみます。
多くの方にとって朗報となったiDeCoの改正内容
iDeCo加入可能年齢が70歳に引き上げられました。実施は3年以内なので、実際の開始時期は未定ですが、システムの調整などを行ったのち速やかにはじめられるものと考えます。
今回の改正の最も評価すべき点は、これまでのiDeCo加入期間延長のために必要だった「国民年金被保険者であること」という要件が撤廃されたことです。現在iDeCoの加入可能年齢は65歳ですが、この要件があるため、20歳から60歳まできっちり40年間保険料を納めていた自営業の方は、60歳以降国民年金の被保険者でいることができず、そのためiDeCoの継続加入がかないませんでした。
この要件を満たし加入期間延長を活用できる人は、過去年金保険料の未納期間があるなど国民年金の「任意加入」ができる人と会社員や公務員などとして働き続ける人のみとなっており、いささか公平感を欠く要件でした。
それが今回は、
1)iDeCoを活用した老後の資産形成を継続しようとする方
2)老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付を受給していない方
の二つの要件を満たせば70歳までiDeCoへの加入が可能となります。また、実施期間は同じく未定ではありますが、掛金も第1号被保険者は月7.5万円、第2号被保険者が月6.2万円と大幅に引き上げられます。
仮に60歳以降、会社勤めを継続している(第2号被保険者)のであれば70歳まで月6.2万円を10年間拠出することができます。10年間の積立合計額は744万円です。また再雇用等で少し年収が下がり適用される所得税の税率が5%、住民税の税率は10%とするとその間の節税メリットは、111.6万円にも及びます。
さらに、月々6.2万円を4%で10年間運用ができると総額は912万円にもなります。これだけのチャンスがあるのですから、多くの方にとって今回の改正は朗報であるにちがいありません。
とはいえ、iDeCoは老後資金を作るための制度ですから、しっかりと「資金を使う期間」も確保しなければなりません。いつから、どのように使うかも視野に、加入期間についても最適な年数を考えたいものです。
60歳以降iDeCoを活用したいケース
では、60歳以降iDeCoを活用したいケースはどういうものでしょうか?
まずは、老後資金を増やしたい方です。前述した通り60歳からの10年間で1000万円近くもの資金を準備することも可能です。しかも所得があれば、税のメリットは110万円以上得られます。
ここでいう所得はなにも給与所得だけに限られるものではありません。家賃収入がある、保険会社の年金保険の受取で雑収入があるなど、iDeCoの掛金は全額所得控除、つまりすべての所得をその金額分打ち消すことができます。
その1000万円を75歳から20年年金形式で取り崩すことにしましょう。投資信託で3%の運用を継続しながら取り崩すと月々55,000円を確保することができます。しかも運用で得た利益は非課税ですからもうひとつのNISAとしての活用が可能です。
20年が長すぎるのであれば75歳から15年、90歳までの資金として取り崩してみましょう。同様に投資信託で3%運用を継続すると、月々69,000円が受け取れます。資産寿命を延ばすという点でも、iDeCoの枠を長く活用するメリットは大きいです。