はじめに
最低5,000円の掛金でも効果あり? 退職所得控除拡大のためのiDeCo利用法
もう一つの活用方法として、一括で受け取る時の退職取得控除を大きくすることを念頭にiDeCoを利用することもできます。
例えば、60歳定年で退職金を1500万円受け取ったとしましょう。この時、勤続年数30年で退職所得控除1500万円も使い切ったとします。iDeCoは40歳からはじめており、60歳時点でiDeCoに適用されている退職所得控除20年分、すなわち800万円は退職金の受取時に重複しているので帳消しになっています。
しかし、その後10年iDeCoを継続すると、新たに10年分の退職所得控除が生まれます。この時、iDeCoの加入年数は20年を超えているので新たな退職所得控除は70万円x10年で700万円となります。
このように、iDeCoの加入年数をできるだけ長く持つことは退職所得控除の拡大につながります。会社を定年退職した際に退職所得控除を使い切ってしまったという方でも再度控除額を積み増しできるのでiDeCoの一括受取が有利になることも考えられます。
iDeCoの退職所得控除をできるだけ大きくしたいということだけを考えれば、60歳以降の掛金は最低5,000円で継続することも有効です。退職所得控除の計算は、加入期間をカウントするので、掛金の額の多寡は関係ありません。
従って、60歳以降の所得が少なく税のメリットはあまり期待できないが、加入期間を延ばすことで少しでも退職所得控除を増やしたい場合は、毎月iDeCoは5,000円を継続積立して、受取時のメリットを拡大することもできます。
退職所得控除は、加入年数によって決まるので、ご自身の年齢から計算していくらまで退職所得控除を利用できるのか容易に予測することができます。
例えば、お勤めは65歳までなのでiDeCoの加入もそこが限界だとしましょう。40歳からiDeCoに加入すると加入期間は25年となり退職所得控除は1150万円です。もし退職所得控除内あるいは多少超過したとしても所得税の課税率5%で抑えたいとなるとiDeCoの資金は1150万円から1540万円未満で抑える必要がでてきます。(所得税5%が適用されるのは所得195万円未満。iDeCoを一括で受け取る場合、課税される金額は退職所得控除超過分の2分の1となるため、仮にiDeCoの資産が1540万円未満であれば所得税5%となる。1540万円-1150万円=390万円÷2=195万円)
同時にご自身がiDeCoで準備する老後資金を1540万円未満と計画しているのであれば、それ以上の資産を創る必要もなくなります。40歳から60歳まで運用したiDeCoの残高が1200万円だとすると残り340万円で目標額に到達するとすれば、月々56,000円を積立てて所得控除のメリットを受け、運用は預金で行うということも考えられます。同時にそれまで運用していた資金をすべて預金に移すことで、利益は望めなくなりますが、65歳時点の資産残高を退職所得控除内あるいは所得税5%内に納めることができます。
一括受取を考える場合、預金に資金を移す作業はいずれにしても必要になってきます。積極運用を継続していて、いざ一括受取をしようと思った際に、市場がクラッシュして資金が大きく目減りしてしまったら困るからです。
このようにiDeCoは一括受取をする場合、資産運用の目標とする利回りも落としつつ、預金など安全資産の比率を高めスムーズに受け取ることも考えていかなければなりません。
iDeCoの受取は、様々なケースが考えられ、簡単に結論がでるものではありません。だからこそ、まだまだ先と思わず、いくつか受取パターンをシミュレーションしながらご自身にとって最善のiDeCo活用法を考えていただくと良いのではないかと思います。
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