はじめに
個人向け社債が人気か?
次に、増加率で目立った債務証券ですが、国債・財投債と事業債の増加が大きく寄与しました。残高と前年同期比を見ると、
事業債・・・・・・9兆2459億円(12.77%増)
他の金融資産に比べると、絶対的な残高の額はそれほどでもありませんが、伸び率はかなり高い水準です。このところ、個人向けの事業債でかなり高利回りのものが登場しています。
たとえばソフトバンクグループの第65回無担保社債の利率は3.34%でした。徐々に、個人の間でも金利選好の動きが強まっており、その分だけ引き合いも多いと考えられます。
一方、リスク性資産では、株式と投資信託受益証券が代表的ですが、株式は前年同期比で3.89%減となりました。資金循環統計の残高は、基本的に時価評価されたものを計上しているため、リスク性資産の場合、価格の下落が残高減につながるケースがあります。ちなみに日経平均株価は、2024年3月末が4万369円の高値をつける一方、2025年3月末のそれは3万5617円でしたから、この1年間で11.77%の下落でした。その影響は無視できません。
では、同じくリスク性資産である投資信託受益証券の残高はどうかというと、この1年間で8.82%の増加となりました。なぜ、株式の残高が減る一方、投資信託受益証券の残高は8.82%も増えたのでしょうか。
「貯蓄から投資へ」の流れが定着
資金循環統計には「調整額」という数字があります。これはおもに、四半期中に生じた価格変化にともなう評価損益を把握するものです。つまり、2024年第1四半期から2025年第1四半期までの4期における調整額と、残高の増減額を比較すると、評価損益を加味しない、正味でどれだけの資金が流出入したのかが分かります。まず過去4期の残高の増減について見てみましょう。
投資信託受益証券・・・・・・10兆5999億円
次に、同期間中の調整額を見てみます。
投資信託受益証券・・・・・・▲6404億円
株式等の残高減少を調整額の減少が上回っているのは、大半が株価の下落によってもたらされたものであることを意味します。また、投資信託受益証券に関しては、6404億円の評価損が生じたものの、残高が10兆5999億円も増えたということは、この間にかなりの資金純流入があったと考えられます。
ちなみに、この1年間で現金・預金の残高の増加額は7530億円でした。確かに、現金・預金残高は、家計の金融資産残高合計のうち51%を占めるほどではあるのですが、この1年の増加額という点でいえば、投資信託受益証券が現金・預金をはるかに上回っていると推察できます。「貯蓄から投資へ」の流れは、少なくともこの1年間の動きを見る限り、定着しつつあると考えることができそうです。
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